心理学

ミルグラムによる「服従の心理」(心理学)

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この記事は、「【報告】ネット版勉強会に向けての新たな取り組み」で説明した「リハビリに関わる心理学の知識」に関する記事です。

「服従の心理」(スタンレー・ミルグラム著)という書籍があるのですが、この書籍は、ミルグラム自身によって1960年から1963年にかけて行われた実験の詳細がまとめられたものです。

社会心理学に関するテキストには必ずと言って良い程載っている有名な実験で、時々テレビなどでも取り上げられたりするので、知っている方もいるかもしれません。

 



まずは、服従実験の概要を説明します。

服従実験の概要

ミルグラムが行った一連の実験は「人は権威者から良心に反する命令を受けたとき、その命令にどこまで服従するか」を調べるためのものです。

この実験の参加者は、新聞広告などで募集された地域の住民でした。

広告には「記憶実験の参加者求む」と書かれていて、参加した方には、交通費の他に謝礼が支払われることになっていました。

対象年齢は20代から50代で、学生でもどんな職業の方でも参加できるように設定されていました。

参加者が約束の時間に大学の実験室に訪れると、実験者から同じ実験に参加する別の人物の実験参加者を紹介します。この別の人物というのは、実験協力者であり、いわゆる「サクラ」です。

実験者は、実験の目的を「罰が学習に与える影響を調べるもの」と説明します。

その上で、くじによって2人の実験参加者の一方を教師役、もう一方を生徒役になるように求めます。しかし、くじには細工が施されていて、広告をみて参加した実験参加者は必ず教師役になるようになっています。(実験協力者が生徒役です。)

場面設定

教師役と生徒役は別の部屋にいて、マイクを通じて、教師役から生徒役に(準備された)問題を出します。お互いに姿は見えず、声だけが聞こえる状態となっています。

教師役の机の上には、電気ショックの発生装置が置かれていて、この電気ショック発生装置は、15ボルトから450ボルトまでの電気ショックを30段階で与えられるようになっています。

生徒役が誤答する度に、1段階ずつ(15ボルトずつ)強い電気ショックを与えなければならないと説明をされます。

電気ショック発生装置には、以下のように記されています。

15ボルト:軽い電撃
195ボルト:強烈な電撃
375ボルト:危険
435ボルト:×××
435ボルト以上は、同じように「×××」

教師の役目

  • 生徒役に問題を出し、間違ったら罰を与える。

生徒の役目

  • 隣の部屋の椅子に固定され、手首に電極をつけられた状態で、出された問題にボタンを使って答える。

実験の流れ

実験が開始されると、生徒役は予定通りに誤答を連発します。頻度としては、正当1回に対して約3回の誤答をするように決められていました。

そういう設定なので、教師役はかなり高頻度に電気ショックを生徒役に与えなければいけません。しかも、誤答を重ねる毎に、電気ショックの強度を一段階ずつ上げていかなければいけません。

生徒役のリアクションとしては、強度が上がるにつれて苦しみを訴えたり、実験の続行を拒否するような声を上げるようになります。

実験参加者は、電気ショックを与える事を躊躇しますが、その背後には実験者が立っており、「続けて下さい。」などの実験計画で決められていた「促しの言葉」を4回かけられます。

そして、実験者から電気ショックを与える事を促されても、教師役が電気ショックを与える事を拒んだ場合に実験は終了となります。

この実験結果を予測できますか?

実験に参加した人数は40名です。実験を最後まで(最高強度の電気ショックまで)やり通す事ができた人はいると思いますか?もし、いるのであれば、それは何人でしょうか?

この実験をするにあたって、「心の専門家」として精神科医40名に予測を行ってもらったそうです。その精神科医らは、ほとんどの実験参加者が150ボルトを超えて、電気ショックを与えることはないだろうと予測したそうです。

そして、最高強度450ボルトの電気ショックを与えるのは、仮にいたとしても1000人に1~2人程度、サディスティックな性向を持つような人でなければ、そのような事は起こらないだろうと予測していたそうです。

※ 150ボルトの時点で、生徒役から「この実験から解放してほしい」という要求をする事になっています。330ボルトに達した時点で、「心臓の調子がおかしい」と叫び、それ以降は、強度の高い電気ショックを与えても、声が聞こえず、問題を出しても反応がない状態となっています。

この実験を知らない人で、この記事を読んだ方は、40人の中から、最後まで実験をやり遂げる事ができた人は何人いると思いますか?

実験結果は、40名の参加者のうち、25名(62.5%)が最高強度の450ボルトまで電気ショックを与え続けたそうです。

実験中の様子と、実験直後について

電気ショックを最後まで与え続けていた人たちは、決して気軽にそれを行ったわけではなく、多くの参加者がため息をつき、脂汗を流しながらも電気ショックを与え続けていたそうです。

実験後の面接の中で問われた「電気ショックを与えることがどれくらい苦痛だったか?」という質問に対しても、ほとんどの人が高いレベルの苦痛を訴えていたそうです。

ミルグラムによる考察

この実験の参加者たちがとった行動は、特有の性格や欲求では説明がつかず、「状況の力」によるものと考察しています。

この実験のその後

この実験の後、いくつかの追試が行われ同様の結果が得られたのですが、倫理的問題を巻き起こし、その後は追試を行う事自体がタブーとなったそうです。

いくつかの追試でも、ミルグラムが行った実験結果と類似の結果が得られているそうです。

【2016/5/3追記】
ミルグラムの実験出して、現代の犯罪やナチスドイツ時代の「支配と服従」について解説している番組がアップロードされていましたので、載せさせて頂きます。

https://www.youtube.com/watch?v=EkOEiWxNmNs&app=desktop

【追記終わり】

最後に

記事を書きながら、「この情報は、リハビリやクリニカルリーズニングと関係あるか?」と思いましたが、とても有名な実験なので紹介させて頂きました。

 

 

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