神経学的異常を評価する理学所見の中でも重要な要素を閉める感覚検査ですが、この感覚についての古典的な研究にHeadによる実験があります。これは、Headの二元説と呼ばれ、触覚としてひとくくりにされていた知覚を「原始感覚と識別感覚」に分類したものです。
Headの二元説「原始感覚と識別感覚」
Headの二元説は皮膚感覚の理解の基盤となっています。ヘッド(英国の神経科医、神経生理学者)は自らの前腕で皮膚神経を切断し、皮膚感覚の回復が2段階で起こることを実験しました。
回復の過程で、
- 強い圧迫
- 温度感覚
- 痛覚
が、まず最初に感じれるようになりました。ヘッドは、先に回復したこれらの感覚を原始感覚と呼びました。
- 遅れて触刺激の強度や質の弁別
- 空間識別能力(2点識別閾のこと)
- 軽い触・圧覚および温度感覚
が回復してきました。これらのより洗練された感覚を、識別感覚と呼びました。
また、皮膚の表在感覚ではない、深部の感覚が神経切断後も残存している事に気付き、この深部感覚の存在についても仮定しました。
ヘッドの実験結果は、神経の再生スピードの違いによるものと考えられています。
ちなみに、この研究はいわゆるシングルケース研究法による方法です。シングルケース研究がしかできない研究領域の代表的なものです。こんな事を多標本でやったら大変な事になります。(というよりも倫理的に許されないので実験不可能です。)
脊髄体性感覚伝導路の構成に対して、脊髄視床路系が原始性、後索-内側毛帯系が識別性として理解されるきっかになった研究だそうです。
また、ヘッドによる他の研究では、内臓疾患時の痛覚過敏帯(内臓疾患に伴う関連痛)について調べた「ヘッド帯」が有名です。
こういった知覚に関する研究も心理学領域の研究になります。