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5.非特異的腰痛の評価|アクティブSLRテストによる骨盤非対称性の運動検査

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クリニカルリーズニングシリーズ10

今回は、骨盤帯の左右非対称性と運動制限パターンを解説していきます。

学派によっては、「骨盤の緩み・アンロック・不安定性」と呼ばれる状態と、「アップスリップ・ロッキング・仙腸関節の圧縮」と呼ばれる状態を評価する方法を解説していきます。

これらの言葉は、傾向としては似た状態を示しているものと解釈して、骨盤帯の非対称性(緩みと圧縮)の状態の評価について話を進めていきます。

 

腰痛患者の骨盤非対称性の運動検査「ASLRT」

患者像

機能的な腰痛で、明らかな神経学的所見などは陰性。腰痛は、片側性でも両側性でも構わないが、しっかりと症状を聴取すると左右差が存在する場合が多い。下肢の症状に関してもあってもなくても構わない。

座位姿勢の持続で症状が悪化したり、

長時間の座位姿勢や持続座位からの立ち上がり、歩き始めの腰痛など運動開始時の痛みを訴える場合には、骨盤帯のいわゆる緩んでいる状態となっている可能性が高いです。

また、右側を代償する形で左側で努力したり過荷重となってしまっている場合は、立位姿勢の持続や、歩行継続などの荷重位の持続で片側の症状が増悪してくる場合は、右側がいわゆる緩んでいる状態で、左側がロッキングした状態となっている場合があります。

どちらの場合もアクティブSLRテスト(ASLRT)によって左右差を確認する事ができ、陽性側の骨盤帯のゆるみを疑う事ができます。

またASLRT陽性側と反対側でSLRTに軽度の制限(自動運動で確認する場合は、このシリーズではASLRT2と記載しています。)がみられている場合は、骨盤帯の非対称性がよりはっきりと出ていると判断する事ができます。

 

検査所見(運動検査)

  1. ASLRT1(自動下肢伸展挙上1):可動域初期
  2. ASLRT2(自動下肢伸展挙上2):最終域

単純に「ASLRT」と記載している場合は、上記のASLRT1に該当します。SLRTのように、膝を伸展したままの状態で股関節を曲げていく動きをパッシブで行うSLRと区別する目的でASLRT2というように記載しています。

これらの運動検査で、非対称性を確認していくのですが、ASLRTでは、上げる際の努力感や、脚の重たさの違いに左右差が出現していないかを確認していきます。

まずはASLRT2では、ハムストリングスの硬さや、足後面のつっぱり感の左右差をチェックしていきます。

 

1.ASLRT1(自動下肢伸展挙上1):可動域初期

膝を伸展位に維持したまま、足部が20㎝〜30㎝挙上するように指示する。持ち上げる角度を高くしてしまいやすい患者に対しては「10㎝程度」と指示内容を変えたりする。

挙上時の主観的な挙上しづらさや、重たさ、努力感に左右差が出現するかを聴取する。挙上位を低く保てずに高い位置で維持しようとする場合も陽性所見(+)と解釈するが、低い位置で維持するように指示しても左右差が生まれる場合に限定する。

※写真では右側でやや挙上位置を高く保っていると判断できる。右側陽性所見(+)

 

2.ASLRT2(自動下肢伸展挙上2):最終域

膝伸展位を保持したまま最終域(疼痛出現域)まで下肢を挙上する。SLRテストとの違いは自動運動で行なっているか否かだけ。

膝が曲がってしまい、正しく自動運動検査を行えない場合は、最終域近くでアシストする事も可能。明らかな神経学的異常がない場合に限り機能的な解釈を加えるので、椎間板ヘルニアを疑う症状が出現していたり問診結果となっていたりしないかを確かめておく事。必要に応じて事前に神経学的所見をとる。

 

 

上記所見陽性患者に対する治療手技

ASLRTによって、主観的な挙げ辛さや、努力感の左右差が確認できた場合は、陽性側への大臀筋の収縮を促します。腰部骨盤帯の安定化運動という意味合いになります。

非対称性が強く、片側で不安定性、反対側ではロッキング(アップスリップも含む)となっている場合は、SLRTの制限が反対側に出現します。

この場合は、反対側へのストレッチや、股関節長軸牽引により改善を期待する事ができます。

マリガンなどで行われる長軸牽引を加えたSLRなども、有効と考える事ができます。

 

背臥位:大臀筋の収縮・安定化運動(右側への介入)

方法

背臥位で、片側の股関節・膝関節を90°-90°となるように保持する。この状態から患者は、足底でセラピストを押し返すように股関節伸展筋に力を入れる。

この時、セラピストの押す(患者側に持たれる)力とつり合うように押し返し、患者の力が上回らないように調整する。

上記の股関節・膝関節を90°-90°の肢位を保持し、7秒〜10秒程度の等尺性収縮を実施する。

適応

ASLRT陽性所見(+)

効果判定

上記検査項目の陰生化と疼痛動作の改善

 

背臥位:SLRでのストレッチ・等尺性収縮後弛緩PIR(左側への介入)

方法

背臥位で、SLRを実施し、制限域に僅かに入らない程度での肢位で、「踵を下ろすように、脚を下げようとして下さい」と伝え、軽い収縮を促す。

セラピストは最終域近くを保持する。軽度の等尺性収縮後の弛緩を利用してストレッチ(筋の伸長)を加える。

適応

ASLRT2陽性所見(+)※SLR制限
反対側のASLRT陽性所見(+)

効果判定

上記検査項目の陰生化と疼痛動作の改善

 

 

記載している内容について

ここで解説している内容は、サイト運営者である私自身が実際に臨床を通して治療効果を得られた治療手技の一部をブログ用に記事にしています。

記事内のテキストと、写真(グレー枠内)に解説を加えているテキストに多少の違いがありますが、これはセミナー用の資料として制作したものを転載しているためです。ここで説明していない用語(検査所見)については、特に気にせずに読んで頂けたらと思います。

ここで解説している事は単純な方法論のみの解説のように見えますが、あくまでも当サイトのコンテンツの一部にすぎません。メインコンテンツである「クリニカルリーズニングシリーズ」の他記事と合わせて読んで頂けたら、どのように臨床に取り組んでいるのかを多少なりとイメージできると思います。

 

「5.非特異的腰痛の評価」まとめ

臨床的には、腰部骨盤帯の不安定性を思わせる症状を訴える患者の多くが、ASLRTで陽性となります。

陽性を示す患者に対して、大臀筋の等尺性収縮を促通すると、ASLRTは陰性化(もしくは改善)します。

明らかなASLRT陽性所見と、大臀筋の収縮エクササイズ後に所見の改善がみられる場合は、大臀筋を強化する運動が、その人にとって優先度の高い筋力トレーニングメニューと考える事ができます。

多くの場合で、ASLRTとSLRの制限(ASLRT2)は、対側性に出現します。

これは、ハムストリングスを含めた下肢後面の筋膜の硬さからくるもので、その理由として考えられるのは、

  1. 不安定側を補う形で緊張を高めていたり、
  2. 荷重バランスの不均衡などが生まれ過剰使用の状態になっている

というものです。

ちなみに、ASLRTが陽性となる骨盤帯の不安定側と肩・股関節の屈曲制限は同側にある事が多く、SLRの制限側と股関節の内転・内旋制限側は同側にある場合が多く、これまで紹介した治療手技と組み合わせると、より効果を期待する事ができます。

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