治療の停滞させないために

4.オリエンテーションの重要性

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clinical reasoning1セラピストがどういった思考過程で、目の前にいる患者のかかえている問題(腰痛や膝の痛みなどの症状)や、その原因に迫ろうとしているのかを検査・治療をすすめていく前に説明しておく事は非常に重要で、その後の臨床推論の難易度を大幅に低減させてくれます。

本記事では、適刺激を探していく作業に入る前に私が実際に行っているオリエンテーションの一例を注釈を加えながら稚拙な文章で解説していきます。

 

【オリエンテーションの重要性(クリニカルリーズニングに関する解説)】

検査をすすめていく上で、治療家の方々が真っ先に考える事は人それぞれで、患者像によっても変動する部分だと思いますが、この記事は「治療を停滞させない事」、「適刺激を見つける事」を優先にした場合の説明をしています。レッドフラッグの除外などには、本記事では触れず(今後、別記事で触れる事にします)に、簡単な問診から以下の条件が揃っている場合に適刺激を見つけていく作業に入ろうとする段階でのオリエンテーションを説明させて頂きます。

  • 患者の症状がメカニカルペインの特徴を有している
  • コンパラブルサインが陽生
  • 症状のベースラインを患者・セラピスト共に把握できている

※ 以下の「」書きは全てセラピスト側の発言です。太字にしています。 ※ →の後に続く部分がその発言についての注釈です。まずは、発言の流れを一通り読んだ後に注釈を読んだ方が読み易いかもしれません。

 

プレテストの後のやりとり

「今、この場で見せて頂いた前屈時にみられた腰痛が、どういった治療刺激に反応するのか探していきたいと思います。もし、治療刺激が的を得ているなら、あなたの前屈時の腰痛が改善するはずです。いくつか、試しに治療をしてみて変化が起きるかを見ていきましょう。」

→ここは、極々普通のやりとりだと思います。

「その変化とは、ほんの些細な変化かもしれません。しかし、この些細な変化をヒントにあなたにあった治療法を探していきます。例えば、痛さは残っているけど先ほどより弱くなっている。範囲が狭くなっている。といったものから、はっきりしないけど何となく感覚的に良くなっている気がする。といった微妙なものまであるかもしれません。」

→些細な変化とは何なのか?と思っている段階ですので具体的に言うことで患者自身が発言しやすくなります。初めて、食べる料理の感想求められた時その感想を言うのは難しいですが、「苦いって感じる人もいるよ」と説明されると食後の感想は言いやすくなるはずです。この発言は普段の実生活に照らし合わせているだけで徒手療法の特殊なやり取りとして説明しているわけではありません。そして、一言目さえ出てしまえば、後はその他の微妙に感じた事も多少なりと発言しやすくなるものだと思います。

「これを見つける事ができれば、あなたが思っているより治療はスムーズにいくかもしれません。」

→今から取り組もうとしている事が患者自身にとって有益な事である事を伝えておくと、「そんな事より治療してくれればいいんだよ。」と思っている患者も検証作業に取り組みやすくなります。 →治療はスムーズにいくかもしれませんというのは、これをしなければ治療はスムーズにいかなくなりますよと暗に伝えています。

「では、治療に入ります。宜しくお願いします。」

→治療をしてあげるというスタンスを治療者が持ってしまう、又は、患者にそう思われると検証作業は難しくなってしまいます。宜しくお願いしますと伝える事で「治療者側だけで取り組むのではなく一緒に探していくので協力し合いましょう」という表現をしています。 以上の前置きをした上で実際に試験的な治療をしてみます。

ここでは、選んだ治療手技は問いません。本記事では、それを選択する思考過程まで説明する事ができないので、以後の記事で触れる事とし、ご自身の「臨床場面でよく使う手技をとりあえずやってみる」という感覚で読み進めて下さい。

 

試験的な治療後、およびポストテスト前のやりとり

治療後のコンパラブルサインの確認作業に入る前に、再び説明を加えます。

「良くなっているかもしれないし、良くなっていないかもしれません。逆に悪くなっている可能性もあります。実際に確認してみましょう。」

→先ほどの説明を行ったとしても患者はまだ、治療後は良くなっていて当たり前だと思っている場合が多いです。ですので、悪くなっている可能性もあると伝えておくと仮に悪くなったとしても今後の検証作業を阻害する因子にはならず、逆に検証作業のヒントとすることができます。仮に、治してあげるというスタンスで治療に取り組み、結果として悪化がみられた場合は患者との治療関係は非常に立て直しにくくなります。「この状況でもう次は、失敗はできない」とセラピストが思ってしまった時点で検証作業がスムーズに進行できなくなってしまいます。

「もし、微妙な変化にでもお気づきであれば、必ず教えて下さい。範囲が狭くなっている。といったものから、はっきりしないけど何となく感覚的に良くなっている気がする。といった微妙なものまであるかもしれません。」

→これは先ほど解説した事を再度伝えています。こういったやり取りが好きな方でなければ、治療後の感想を求められるのは非常に苦痛な事です。この部分を保護してあげると患者は自分の思っている事を表現しやすくなります。以前の記事でも触れましたが、患者の方が痛みの事をセラピストよりも知っています。これを上手く聞き出せなかったら検証作業において非常に不利になってしまいます。

この場合の代表的な患者の反応の3つのパターン挙げてみます。明らかな改善がみられない為、戸惑った様子をみせて、

  1. 痛いけど、なんとなく良くなった気がするなー
  2. んー(苦笑いしながら)、変わらないなー
  3. 変わっている感じはしないです。

3については特に問題はないのですが、1と2の反応をされる患者は、さらなるやりとりが必要になると思っています。

1の場合の対応です(あくまでも一例です)。

「もし、変わらなかったら変わらないと言って大丈夫ですよ。逆に悪くなっている場合は、我慢せずに必ず教えて下さい。これらが治療のヒントになるので絶対に我慢はしないで下さい。また、この何となく良くなった気がするという感じを1つの基準にするので覚えておくといいかもしれません。」

2の場合の対応です(こちらも一例です)。

「本当ですね、変わっている感じはしませんね。では、この後も確認作業を繰り返すのですが、もしあなたに合っている治療法なら、治療後の変化にあなたは気づけると思います。ほとんどの皆さんが、時間はかかりながらも、この変化に気づけるようになれます。後、確認ですが逆に悪くなってはいませんか?」

読んでいてお気づきの方もいると思いますが、1の対応は非常に優しい対応です。しかし2の対応は、やや挑発している感があります。 この2つの違いは、確認作業で何を防ぎたいかによって異なります。1の場合に防ぎたいのは、第1の過誤で2の場合は第2の過誤です。これは陰性を陽生と間違ってしまうミス(偽陽性)か、陽生を陰性と間違ってしまうミス(偽陰性)かを分類したものです。

1のような返答をする方の場合、何も良くなっていないのに、「軽くなった」「いい感じがする」といった具体性のない返答が多く、治療者の期待に応えようとする傾向があり全てのリアクションが良い方向に傾いて返ってきてしまうので結局何が良いのかわからなくなってしまいます。

2の場合は、逆に良くなっている微妙な変化に気づこうとしていない事が多く。こういう患者の場合は自分が納得のいく改善までいかないと「変わらない」の一辺倒である事が多いです。こうなると、治療の微妙な変化をヒントに進めていく作業がなかなか前に進みません。

ですので、1の場合は全ての刺激に「良いよ」と言ってしまう反応を抑制する為に悪くなった時の話をする事や、治療者の顔色を伺う必要がない事、変わらないと言う事が治療進行に価値のある事、を暗に伝えておくのです。 2の場合は、変化に気づこうとしない患者の姿勢を検証作業に向ける為に、やや挑発的ともとれるような対応をします。「些細な変化に気づく事ができる能力があなたにありますか?」「あなたは、このやりとりができるまでどれくらいの時間がかかってしまいますか?」と暗に問いかけているのです。

もし、検証作業に前向きに取り組んでいるならほとんどの場合、セラピストの問いかけに苦笑いはしません。セラピストに不快に思われないように気をつけながら良くなっていない事を伝えてくれるはずです。この場合が先ほど挙げた3に当てはまる患者です。もちろん程度の差はありますが、前向きに取り組んでいる患者はセラピストに何かしらのヒントを与えようと努力する姿が見えるか、少なくとも検証作業を停滞させてしまうような反応はしません。

しかし、気をつけないといけないのは、ここで患者と対抗してはいけません。仮に前記事で触れたように、患者は、何も変わらないと言ってもセラピストからは価値のある反応(私の判断基準になってしまいますが)に見えた場合も、患者には「たしかに良くなっていない感じですね」と前置きした上で先ほどのような対応をし、最後に「逆に悪くなっていませんか?」と問いかけると、「悪くなっていないよ。むしろ、少し前屈しやすくなった気がするかも」と悪くはなっていないという発言を皮切りに認めようとしていなかった自身の感覚的なものをセラピストに知らせようとしてくれる場合があります。また、次の場面で、もう一度反応をみようとする時の第2の過誤の可能性を事前にできるだけ低減させておく事ができます。

 

二回目の試験的な治療の前のやりとり

これから、もう一度試験的な治療に入っていくのですが、その前に再び説明を加えます。

「先ほどは、はっきりとした良い変化は見られなかったので、もう一度、同様の治療をやや強めに行ってみます。」

→この時点で、別の治療をしてはいけません。(これは非常に重要な事ですので別記事で解説します。ここでは理由を求めず読み進めて頂きたいと思います。)

「もし、この治療刺激が、的を得ているなら、先ほどより治療強度を上げているため、変化がよりはっきりわかるはずです。」

→もし適刺激なら先ほどよりも良い変化と感じる事ができます。というメッセージを伝える事で、先ほどよりも良い変化であるか否かというシンプルな質問に置き換える事ができます。強度を上げたにも関わらず、何ら変化しないとなった場合は、この手技が無意味である事を教えてくれます。

今用いている手技を否定する為には、「しっかりと刺激を行った上でそれでも一切の変化はみられない」と言えないと次の手技を検証する作業に今回のやり取りを生かせません。なぜなら、次の手技を検証する際に「なんとなくでも良いですが、前回用いた治療刺激の時と比べて、この方が自分に合っているな、と思いますか?」等と聞く事で、無意味な手技か否かの返答をしやすくできます。比較対象ができる事で、患者が何かを感じた際に「前のより良いかも」という反応の価値づけをしてくれます。

 

終わりに

これらのやり取りは、すでに治療行為をしているように見えますが、ここまでが治療手技の良し悪しを判断する為のオリエンテーションになります。初回の試験的な治療は、患者に検証作業過程を実際に体験して頂く中でオリエンテーションを行い、これらのやりとりは主観的ではあるけれども「丁寧に検証作業を行った」と言え可能な限り確からしさを確立していけると思っています。

ここまで行ってはじめて、実際の試行錯誤の過程としての適刺激を探す作業に入る準備ができていると考えています。最初は、面倒くさいやりとりだなと思われる方も居ると思いますが、これをやっておくと、患者自身が治療に対して前向きになり色々と気付いた所を知らせてくれるようになります。このヒントを手掛かりに治療をすすめていきやすくなるのです。

選択する治療手技そのものは、当てずっぽうではなくそれを選択するまでの思考過程がありますがここでは一切触れていません。今後記事にする予定としてここで一旦終わらせて頂きます。いつも以上に読みにくい記事になってしまい申し訳ありませんが、最後まで読んで頂き本当にありがとうございます。

次の記事→ 5.よく形成された目標設定

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