治療手技総論

2.治療手技の強さの程度、グレードについての解説

更新日:

クリニカルリーズニングシリーズ4グレードというのは、行っている手技の強度を表す指標のことです。
どの程度の強さで実施されているのかを簡潔に表現するための、強さの程度に関する単位だと思って差し支えないと思います。
この「グレード」とそれを臨床で用いる意義について、前回の記事と関連付けて解説していきます。また、新たな試みとして、簡単ではありますが、スライドを作成しています。合わせてご覧下さい。

 

では、これから「グレード(治療強度)」について解説していきます。

まずは記載の仕方ですが、例えばグレード2という治療強度で行った場合、通常は「グレード2」だとか「GⅡ」というふうに記載します。

本ブログでは、そのグレードの事を、「治療強度」と使ったり、単に「強度」としている場合もあります。文脈上、冗長にならないように使い分けていますが、グレード・治療強度・強度は本ブログ上では、同一の意味として捉えて下さい。では、解説に入ります。

グレードと言われるものには、関節モビライゼーションの体系のなかで代表的なものが二つあります。これらは刺激の強度を表現するためのものです。(治療グレードを考慮しない学派も存在しますが、だいたいこの二つのうちどちらかを用いている場合が多いと思います。)

一つは、ノルディックシステムやドイツ徒手医学が採用している三段階のグレード1〜3
もう一つは、メイトランドコンセプトで採用されている四段階のグレード1〜4

私は主に、グレード1〜3を用いる学派で学ぶ事が多かったように思いますが、臨床現場では、「グレード」を用いる際にはメイトランドコンセプトで用いられる四段階のグレードを採用しています。

その理由としては、治療強度に関して微妙な違いを表現する事が可能で、尚且つ、関節モビライゼーションに限らず別の組織に対する治療手技でも応用可能だからです。
ここからは、この二つのグレードについて関節の動きで説明していきます。

 

三段階のグレード表記

  • グレード1:関節が緩みの位置にある場合(弛緩)
  • グレード2:緩みがない状態(緊張)
  • グレード3:緩みがない状態から伸張を加えた状態(伸張)

三段階でのグレード表記は、「弛緩→緊張→伸張」という段階の繋がりがイメージしやすいところにあると思います。

 

 四段階のグレード表記

  • グレード1:可動域の開始位で行われる小さな振幅
  • グレード2:可動域内での抵抗がない範囲の大きな振幅
  • グレード3:可動域の制限があるところ(抵抗域、疼痛域)までの大きな振幅
  • グレード4:可動域の制限があるところ(抵抗域、疼痛域)での小さな振幅

抵抗域や疼痛域に入る場合、その程度に応じて- -から++までの段階付けも行います。

GIV++がもっとも強い治療刺激で、可動域の最終域でオーバープレッシャーをかけている状態という事になります。テキストによっては、- - -〜+++までとする場合もあります。

※記事の都合上、かなり簡単に記載しています。4段階グレードの詳細についてはメイトランド関連のテキストをご参照下さい。

※振幅はメイトランドコンセプトの推奨する治療法であるため、振幅が行われる前提で段階付けられています(振幅:オシレーション)。

※三段階のグレードを用いる学派は、振幅ではなく、持続した治療刺激を用いる事が多いため、グレードに振幅の有無を考慮していません。

4段階でのグレード表記は、3段階でのグレード表記にはない細かさがあります。臨床でのセラピストの行動を記録するには優れた方法だと思います。しかし、これがデメリットでもあり、やや複雑であるため、初めてこの段階付けに触れる方にとっては少々とっつきにくいかもしれません。

例えば、GⅢ++で治療を行う場合とGIV-で治療を行う場合を考えてみると、常に抵抗域にいるのではなく振幅によって、そこを行き来するという意味では、GⅢ++の方が弱い刺激のように感じ、常に抵抗域内で治療するGIV-が強い刺激であるように感じます。

しかし、R2に近ずく程度で考えた場合は、GⅢ++がR2により近ずき、GIV-では軽い抵抗感を感じる程度の所で止まっていますので、GIV-の方が弱い刺激と解釈できそうです。

単純にグレードが上がったから強い刺激と言えないのが、この四段階のグレードが混乱を招く要因の一つだと思います。

また、-や+の解釈はセラピストの主観です。技術の向上によりある程度の正確性は確立できても、結局は明確に線を引く事は不可能です。

また、R1とR2の幅の大きさは、患者によって違います。軽い抵抗感も感じる事なく急にR2に達する患者もいれば、R1からR2まで少しずつ抵抗感が増してくる患者もいます。可動域内の特定の角度のみで疼痛を有する患者もいます。

これらを考慮するためにムーブメントダイアグラムが使用されるのですが、ここではそれを解説する事が主目的ではないため、割愛します。興味のある方は、ムーブメントダイアグラムで検索してみると良いかもしれません。

基本的には、制限域や疼痛域が関節角度の最後のところで最も強くなるという患者像としての前提があります。そして、その制限域や抵抗域に向かうような刺激を加える治療刺激のその強度を表現しようとしていますので、そういった患者ではない場合や、行おうとしている治療手技が制限域や疼痛域に向かっていない場合(間接法とよばれるものなど)に、このグレード表記を用いようとすると矛盾が生まれてしまいます。

ですので、決してどちらかが優れている方法という事はないと思います。自身の臨床と照らし合わせて実用性のあるものを選択すればいいと思っています。

 

「可動域制限」ではなく、「疼痛」で考えた場合

純粋な可動域制限ではなく、疼痛によって可動域が制限されている場合を考えてみます。まず、患者がわずかな疼痛を感じた関節角度をP1と捉える事ができます。そして、強い痛みを感じたところ(痛くてこれ以上、動かせないなど)をP2とする事ができます。

また、トリガーポイント療法などの、特定の圧痛点に対する押圧刺激を用いる事を考えた場合は、患者が圧痛をわずかでも感じた刺激強度をP1と捉える事ができます。そして、強い痛みを感じた押圧の強度をP2とする事ができます。

その圧痛点に対して、圧痛を感じない程度の小さな振幅刺激を加えた場合は、グレード1と考える事ができます。圧痛をわずかに感じる程度までを大きな振幅で加えた場合は、グレード3-と考えられます。常に圧痛を感じている刺激強度で、小さな振幅刺激を加えた場合は、グレード4となります。

この刺激強度は、実際に治療を行っている理学療法士が、患者の反応や、ポストテストの結果(コンパラブルサインの変化)などを読み取りながら決定していくのが通常です。ですので、今用いている治療刺激の強度を微調整しようと思った時に、この4段階のグレード表記がその判断を助けてくれます。

臨床では、多くの患者を担当しており、また時間的経過のなかで、前回どの程度の刺激強度を用いていたかが曖昧になってしまうと、微調整のしようがなくなってしまいます。今後のクリニカルリーズニングを適切に行っていくために重要となってくる部分だと思います。

 


前回の記事が少々長くなりすぎてしまい、少し評判が悪かったので、今回予定していた記事は次回記事との二つに分割させて頂きました。今回のような、テキストにのっているような事についてだけの解説は、本ブログサイトの主目的ではありませんが、これから解説していこうとする部分の前提として必要になりますので、次回記事への導入として解説させて頂きました。これらについての詳細は、マニュアルセラピーに関する書籍をご覧下さい。

最後まで読んで頂きありがとうございました。次回は、治療強度を調整しながら手技の評価を進める事について解説する予定です。

次の記事→ 3.グレードを変更しながら、その治療手技を評価する手順

スポンサーリンク


-治療手技総論

Copyright© 理学療法士ブログ , 2017 AllRights Reserved.