徒手療法を学ぶ前に大切な事

4.セラピーを大切にしてもらう働きかけ ①遅刻について

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クリニカルリーズニングシリーズ9この記事では、理学療法士の治療介入をすすめていくうえで、「気をつけておくべき事」として、患者が治療の予約時間に遅れてきた場合や、セラピーが停滞してしまうような行いがあった時の対処法についてのアドバイスをさせて頂きます。

ここで解説する事の内容としては、理学療法士と患者の治療関係を考えるうえで、「理学療法士がどうあるべきか?」についての特定の位置をとっています。

それは、理学療法士による治療的介入が単なるサービス業ではなく

理学療法士側に指導者的側面を合わせて持っていたり、

(療法士だけではなく)療法士と患者が協力して患者が抱えている問題に取り組んでいくという協働関係にある、

というのを前提にしています。

この療法士側のスタンスについてはバッググランドが違ったり、何かしらのキカッケとなるようなエピソードに出会うと、そうでない理学療法士よりも特定の事に拘りを持つことも考えられますので、この点(どうあるべきか)については、この記事では細かく触れずに臨床上よくある場面の対処法についてのアドバイスをさせて頂きます。

今回の記事では、「治療予約時間からの遅刻」や「治療時間に遅刻を繰り返してしまう」といった患者への対応方法についてです。

 

予約時間の遅刻

予約時間の遅れを指摘せずに、そうでない場合と同じよう治療介入がスタートしていませんか?

この問題は、予約制をとっている場合に起こる問題ですが、通院に慣れてくると予約時間をほんの少し遅れてくる場合は必ずあります。

 

最初はちょっとした時間の遅れ

最初は少しの遅れでも、「遅くなってしまいました。」というな形で患者からの声かけがある場合が多いように感じます。

そして、この状況に対して、ほとんどの療法士は、ちょっとした遅刻を注意する事無く、「大丈夫ですよ。」という返答をした後に予定通りに(時間通りスタートしていた場合と大きく変わらずに)セラピーが行われるかと思います。

この対応は、私自身がとる対応でもあります。この場合を、大きく分けると二つ場合があるように感じます。

1つは、偶然その日は遅刻してしまったという場合。もう1つは、遅れる事にいつの間にか慣れてしまって、(ほんのわずかな時間かもしれないが)遅刻気味での来院が当たり前に変わってくるという場合です。

 

これが繰り返される場合は、注意は絶対にしないといけないと思っています。

私自身は、約束の時間に遅れた理由が、普通に考えて社会的に通用しないような内容なら注意すべきだと思います。ここを中途半端にすると「遅刻はしてもいいもの。」という事を理学療法士自身が認めている事になります。

たった一回の遅刻をあげ足をとるように注意する必要はありませんが、繰り返される遅刻を見過ごしてもいけません。

しっかりと意味のあるリハビリをしていると言うのなら、患者にも治療(治療時間)を大切にしてもらうべきです。遊びに来ているわけではなく、患者自身が抱えている日常生活上の問題を解決するためにそのお手伝いをし一緒に取り組んでいるものなはずです。

 

例えば、どのように注意をするのか?

何も、学校の先生が生徒に「遅刻はしていけません!気をつけなさい。」というような怒るような注意をする必要は一切ありません。また、患者も大人ですので、自分自身で「遅刻をすべきではない」という判断を行ってもらう必要があります。

なので、担当の理学療法士が感じている事を、患者に聞くだけでここで促したい事は達成できます。

例えば、

「○○さんは、最近、約束している治療時間に遅れてくる事が多いように感じますが、どうでしょうか?もしかしたら、たまたま何回か続いてしまっているだけですか?」

この聞き方は、直接的な注意はしていないですが、治療時間に遅れてくるという事についての担当の理学療法士が何かしら思っている事があるという事を患者が受け止めるメッセージになります。

もし、ここで患者から「そんな事ないでしょ!」と返答があったとしても、この場合は自分の否は認めようとはしていないものの、メッセージとしては伝わっている事が多いです。

それに対して、どっちが正しいか(遅刻が多いかどうか)の話合いをする必要はなく、

そうんですか。そうすると私の勘違いかもしれません。引き続き、治療時間に御協力頂けると助かります。

私自身の臨床場面では、こう話した次回から、遅刻する事はかなり減る事を経験しています。

 

それでも遅刻が繰り返される場合

中には、先ほどのような隠れたメッセージを受け取れない患者もいます。

さらに遅刻を繰り返したり、少し良くなったと思ったらすぐに遅刻が当たり前になるような場合もあります。

こういった場合は、私が担当の場合は直接的に聞く場合が多いです。

「○○さんは、今日は○分の遅刻をしていますが、これは何か理由はありますか?理由がなく、予約時間に遅刻した場合には、治療時間を短縮するという形での対応になってしまいます。もし理由があるのあれば聞いても良いですか?」

この場合は、しっかりと「あなたは遅刻をしている」という事を伝えています。しかし、理学療法士が注意する側のスタンスはとっていません。

遅刻をしているという事実を話した上で、「仕方ない理由があるなら考慮しますので、その場合は教えて下さい。」という遅刻しても仕方のない理由があったかどうかについて話し合おうとしています。

 

もし、とって付けたような理由を言ったとしても、さらなる指摘をする必要はない。

この状況に置かれた場合に、①「理由もなく遅刻をした」と正直に話す患者もいれば、②言いわけのような、とって付けたような理由を話す患者もいます。また③本当に考慮すべき理由(繰り返しの遅刻でも、今回だけは本当に仕方のない理由)がある場合もあります。

ここでも、実際に遅刻をしたという事については話していて、「遅刻は良くない事」という一般的な理解があれば、ここまで話すと、遅刻を繰り返す事はグッと減ります。

上記で挙げた、①でも、②でも、③でも、です。この場で、どうやりとりをするかではなく、理学療法士からの指摘で「遅刻は良くないこと」という自身の認識が呼び戻されると思っています。

ここで、分が悪くなって、「ん?本当に?(ここでは②に当てはまる)」と思ってしまうような説明をされたとしても、「遅刻は良くない事」というメッセージは伝わっているはずです。

 

それでもダメな場合

ここまで話しても、遅刻を繰り返す場合は、「どうして遅刻をしてしまうのか」、「セラピーをどう考えているのか」について話合う必要があると思っています。しかし、私の経験上で、「遅刻してしまう事について」まで話合った患者は今までで2人程です。

この数字は、あくまでも私が勤めてきた病院や地域的なものだったりすので、数に意味はありませんが、前述した事を、その場面場面で対応していれば、遅刻を繰り返してしまう患者はほとんどいない(時々それなりの理由があって遅刻をするのは別として)と思っています。

セラピーを患者自身が、大切にして取り組むかどうかも、実は担当の療法士との関わり合いで決まってくると感じています。

 

「予約時間の遅刻」を繰り返す患者への対応についてのまとめ

患者には、「自身が抱えている問題を解決するためのセラピー」を大切にして、取り組んでもうらべきです。

直接的な注意はする必要はありません。しかし、遅刻する事を何とも思っていないと思われてしまってはいけません。

上記で解説した方法であれば、理学療法士よりも年上の(年上である事が多い)患者に対して、下手に高圧的になる必要もないし、協働関係にある患者とぶつかる必要もないので、若手の理学療法士がもとれる行動だと思います。

もし、「遅刻する事を何とも思わない」というなら別ですが、「やはり、それは良くない事」という思いがあるなら、しっかりと対応はとるべきです。

ここで解説した事は答えではありません。何かしらの参考やヒントになればと思います。最後まで読んで頂き有難うございました。

次の記事→シリーズ内の記事を準備中です。しばらくお待ちください。また、次のシリーズを並行して製作中です。シリーズ10「治療手技の紹介&解説」も合わせて読んで頂けらたと思います。

 

 

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