徒手療法を用いて治療にあたる際に、若手のセラピストが乗り越えないといけない壁があると思っています。
治療への取り組み方や、徒手療法を健全に用いていく為の心構えといった、技術以前の話になります。これを意識するだけで臨床に誠実に向き合え、結果的に技術の向上への近道になるのでは?と私自身は考えています。
効果判定を恐れない。
効果判定は非常に重要です。効果判定で失敗しないための準備も非常に重要です。(この点については、他の記事で解説しています。)ここでは、セラピスト側のメンタル面に関するアドバイスをさせて頂きます。
効果判定の1つに、患者に「どうですか?良くなっていますか?」という問いかけをする事があります。
例えば、歩行時に出現していた痛みに対して、何らかの試験的治療を加えたとします。その効果が表れているかを検証しようとした時、先ほどの質問を投げかける場面を想定してみます。
この場面での、この問いかけをする時に多くの療法士がやってしまうのが、声を小さくして、その返答が他の療法士には聞こえにくいような小声でのやりとりをしてしまう事です。(無意識だと思いますが、そうなってしまっている方は非常に多いです。)
これが絶対にダメなわけではないですが、自分が加えた治療的行為の効果判定を誠実にみようと思っているなら、小声になる必要はありません。
「全然、良くなっていません。まだ痛いです。」とリハビリ室中に聞こえるような大きな声で返答されるのを嫌がる必要はありません。
最初は、「良くなっていないです。」の繰り返しのはずです。
徒手療法を学ぶ事、理学療法を学ぶ事、これは教科書を読めば、それなりに勉強した感じにはなれますが、実際に治療効果を出せるかというと、残念ながらそうではありません。
トライ&エラーを繰り返しながら、自身の治療を省みる事を繰り返して、その中から「もしかしたら、これは効いているかも」というのが見つかり、それをさらにブラッシュアップしていく過程で、徒手療法を使いこなせるようになるものだと思っています。
(私自身、その途中にいると思って取り組んでいます。)
実際、私も理学療法士になりたての頃は、患者からかえってくるリアクションは「良くなっていないです。」の繰り返しでした。
自分がやっている事が、「もしかしたら効いているかも」ではなく、「効いている」というためには、効いていないものはちゃんと「効いていない」と言ってもらう事です。
効いていないものを「効いていない」と言ってもらえない療法士は、その患者との向き合いが中途半端になっているはずです。
もし、「効いていない」と言いにくそうにして「んー、少し良いかも。」というような返答をされた時に、
「大丈夫ですよ。もし良くなっていないと感じたら、はっきりと良くなっていないと言ってもらった方が、私も何をすべきかの判断がしやすくなります。また、わらないという時は、わからないで構いません。」
このように返すべきで、今までの臨床でこのやり取りをする必要があった場面は必ずあったはずです。今までに一度もこのような発言をされていない療法士は患者との向き合い方を今一度見直す必要があると思います。
患者から「良くなっていないです。」と言われた時に落ち込む必要はありません。
今現在、何をやろうとしているかをしっかりと説明すれば良いだけです。
「今は、いくつかの痛みの原因を考えています。この原因に対して、1つ1つ治療を進めてどれが問題かをチャックしている段階です。」
「もし良くならない場合は別の問題が考えられるので、その時は次の可能性に取り組みます。治療後の変化がない場合は、今のように“良くなっていないです。”とはっきり言ってもらうと判断がしやすくなります。」
「何に反応がみられるかを確認している段階ですので、こういった確認を繰り返していきます。」
このような感じで患者に説明すれば、試験的治療の結果が例え、「良くなっていないです」でも、患者も療法士も気まずくなる事はなく、
「これでも効きませんか?では、他の可能性について探ってみようと思いますが宜しいですか?」
と、この取り組みを継続する事ができます。
治療を見られても動揺しない。
若手の療法士は自分が今行っている治療を他の療法士に見られたくないと感じている方が、少なからずいるようです。
今までに関わってきた事がある、私より経験年数が下の療法士のほとんどがそうでした。(これについては、地域差や施設の特徴などもあるので、私の勘違いかもしれませんが、、)
リハビリ室にある治療ベッドを選ぶ時にも、他から見通しの悪い場所だったり、入院施設がある場合は、病棟(病室)でリハビリを進めようとします。
見られるのが嫌でその選択をしているとは限らず、そうすべき理由もあるかと思いますが、可能な限り見えにくい場面での治療はオススメしません。むしろ他の療法士から目の届きやすい場所を選択すべきです。
さっきまで威勢が良かったのに、、、
その理学療法士が何をしているのかなと治療場面を覗き込んだりすると、急に動揺して、患者に対してとても威勢が良かったのに、とても小さな声で、何を話しているかわからなくなったり、こちらをチラチラと気にしている様子を見せたりします。(私自身、意地悪をしようとして治療場面を見ているわけではないですし、純粋に何をやってるのかなという興味です。)
見られていても堂々とできないのは、「自身の取り組みのどこかに手抜きをしている所がある事を知っている」からではないかと私は思っています。
一生懸命、今できる範囲の事に正面から誠心誠意向き合っているなら、堂々と自身の臨床を多くの療法士に見てもらう方が成長を加速させます。
見ていた先輩がアドバイスをしてくれるという事も1つですが、それよりも、正面から向き合う事を避けなくなるというスタンスが大事だと思っています。
使う言葉、患者との向き合い方、学術への取り組みなど、全てに良い方向に働く基盤となるもので、これがない療法士がどれだけ講習会に行っても小手先で誤魔化す事が上手になるだけと感じます。
かなり、私見に富んだ内容ですが、私自身が取り組んできた事と、私が指導できる範囲の若手療法士に話してきた事の一部です。これを読んだ若手療法士のアドバイスになっていれば幸いです。
まとめ
もし、
- 効果判定の時の確認の声が小さくなる。
- 「良くなっていない」を恐れている。
- 治療場面を見られる事を避けている。
これらに当てはまる場合は、「自身の取り組みのどこかに手抜きをしている所がある事を知っている」結果、そうなっているのかもしれません。自身の成長のためにも、まずは臨床で取り組み方を見つめ直してみると良いと思います。