治療手技の紹介&解説

2.非特異的腰痛の評価|肩関節屈曲と股関節屈曲の運動検査

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クリニカルリーズニングシリーズ10

腰痛患者の四肢の運動制限パターンとして、肩関節屈曲可動域と股関節屈曲可動域の運動検査を行い、陽性所見(+)となった際に選択する手技を紹介します。

片側の腰痛を訴える患者には、結構多くみられる制限パターンなので、担当している患者で評価する機会があれば是非チェックしてみて下さい。

 

腰痛患者の四肢の運動制限パターン「肩関節屈曲と股関節屈曲」

患者像

左右差のある腰痛を訴える患者で、殿部痛や大腿部痛、下肢痛はあってもなくても構わない。慢性腰痛であれば、これまでの経過で、神経学的所見は陰性だが椎間板ヘルニアと診断されてきた患者が多い印象。どちらかと言うと、座位姿勢の持続やデスクワークの時間が長い人に多い。疼痛をもっとも自覚するのは、座位を持続的にとった後の立ち上がり動作が多い。次に座り続けで症状が増悪し、歩いているのは比較的楽と話す。

 

上記のような患者に以下のような運動検査を行ってみて、陽性所見があるかをチェックします。

検査所見(運動検査)

  1. 症状側の股関節屈曲制限があり、
  2. さらに同側に肩屈曲制限がある。
    (※明らかな関節変形がある場合を除く)

※機能的な運動検査の所見は、評価の過程で、患者としっかりとコミュニケーションをとりながら軽微な左右差を確認していきます。患者の主観的な反応を解釈する努力を療法士ができているかが臨床結果を大きく左右します。この点について当記事では触れませんが、過去のクリニカルリーズニングシリーズで解説済みとして話を進めます。

 

股関節屈曲

両側の股関節の屈曲可動域と抵抗感を評価。

両手で片方の膝を抱えるように指示し、左右の抵抗感に違いがあるかを確認する。

必要に応じて、最終域でのオーバープレッシャーを加えて、抵抗感を感じやすいように補助する。屈曲するにつれて外転位になる場合も出現する早さの左右差を確認する。左右差の訴えがない場合を陽性所見(−)とする。

 

肩屈曲

片側ずつ肩を屈曲するように指示する。左右差が分かりにくい場合は、両肩屈曲位をとらせ、そこから片側ずつオーバープレッシャーを加える。

※写真では右側に軽度の可動域制限の陽性所見(+)

 

関節の構造的な問題であれば著名な左右差が起こりうりますが、ここで確認したい事は機能的な制限パターンです。多くの場合で、患者自身が「微妙な左右差の存在をチェックしよう」という意思がなければ見逃されてしまいます。

陰性であるなら、「確実に陰性であるという事が言えるか」を注意しながら、症状と同側半身の股関節と肩関節に屈曲制限が存在しないかをチェックしてみて下さい。

「肩関節の制限はあるけど、股関節に制限はない」という場合や、その逆もあります。肩・股関節のいずれかに陽性所見がある場合は、さらなる評価を加えたりするですが、ここでそれを解説すると複雑&膨大な文字数になってしまうので、ここでは、肩・股関節のいずれかのみに陽性所見がある患者の場合も同じように、これから解説する手技(試験的治療)によって、所見・症状の変化が生まれるかを確認してみて下さい。

 

上記所見陽性患者に対する治療手技

上記の自動運動検査で陽性所見を示した患者で、疼痛部位に治療を行っても症状が残存してしまう患者であるなら、疼痛側の胸椎レベルに圧痛点(TP)がないかをチェックしてみて下さい。

また、腸骨稜や腹直筋外縁にも圧痛点(TP)がみられる場合もあり、そのいずれかの圧痛点の治療によって、先ほどの四肢の運動制限の改善と、実際の疼痛動作の改善がみられる場合があります。

この圧痛点に対して、ある一定の圧をかけながら、特定の方向に治療刺激を持続的に加えていきます。刺激を加える方向が非常に重要と考えています。※治療刺激の強度については別シリーズで解説しています。

クリニカルリーズニングシリーズ4「治療手技総論」では、マニュアルセラピーに関する事について11の記事があります。よろしければ合わせて読んで頂けたらと思います。

 

側臥位で右側胸椎部の治療

方法

胸椎部の圧痛点、坐骨部の圧痛点(TP)を探す。最突出部・隆起部周辺にTPがある事が多い。圧痛点が見つかれば、下方へリリースをかけるように筋膜層を可動させる。

適応

同側の自動運動検査で肩屈曲陽性所見(+)、股関節屈曲陽性所見(+)

反対側の自動運動検査でASLR2陽性所見(+)

効果判定

上記検査項目の陰生化と疼痛動作の改善

→ここでは、坐骨部への治療に関する解説もありますが、胸椎部の圧痛点(TP)に対する治療のみので構いません。

 

背臥位での腹側への治療

方法

腹部(腹直筋外側縁〜腸腰筋を触診可能部位)、腸骨稜部、大腿近位外側部の圧痛点(TP)を探す。圧痛点が見つかれば、上方へリリースをかけるように筋膜層を可動させる。

適応

同側の自動運動検査で肩屈曲・股関節屈曲陽性所見(+)

反対側の自動運動検査でASLRT2陽性所見(+)

効果判定

上記検査項目の陰生化と疼痛動作の改善

→同側の胸椎部に圧痛点(TP)がない場合は、同側の腹直筋外縁・腸骨稜部の上方への治療で改善を示す事もあります。

 

記載している内容について

ここで解説している内容は、サイト運営者である私自身が実際に臨床を通して治療効果を得られた治療手技の一部をブログ用に記事にしています。

記事内のテキストと、写真(グレー枠内)に解説を加えているテキストに多少の違いがありますが、これはセミナー用の資料として制作したものを転載しているためです。ここで説明していない用語(検査所見)については、特に気にせずに読んで頂けたらと思います。

ここで解説している事は単純な方法論のみの解説のように見えますが、あくまでも当サイトのコンテンツの一部にすぎません。メインコンテンツである「クリニカルリーズニングシリーズ」の他記事と合わせて読んで頂けたら、どのように臨床に取り組んでいるのかを多少なりとイメージできると思います。

 

「2.非特異的腰痛の評価」まとめ

腰痛患者に対する機能的な評価として、「四肢の運動評価が、治療手技選択のヒントになる事もある」という事を伝えたく一例を示しました。股関節屈曲制限が認められる患者の肩の屈曲制限の有無をチェックしてみて下さい。

そして、同側の胸椎部に圧痛点があれば、その圧痛点を下方にリリースを加えるように治療刺激を入れてみて下さい。

同側半身の股関節・肩関節の屈曲制限の改善とともに疼痛動作の改善が認められれば、胸椎部(もしくは坐骨部、腹部、腸骨稜部)が治療介入ポイントになるかと思います。もちろん、「腰痛患者全例で使える魔術のような治療テクニック」ではない事をご理解頂けたらと思います。

次の記事→ 3.非特異的腰痛の評価|肩関節外転と股関節内転・内旋の運動検査

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