治療手技総論

3.グレードを変更しながら、その治療手技を評価する手順

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クリニカルリーズニングシリーズ4今回の記事では、前回記事で解説した4段階のグレード表記を用いて、「グレードを変更しながら、その治療手技を評価する事」について解説していきます。

それぞれのグレードについてイメージがつきにくい方は、「(例外もありますが)グレード1→4になるに従って強度が増し、グレード3と4は、可動域最終域や痛みが出る可動域まで動かしている」という程度の理解で構いません。

前回記事でも用いたスライドを載せておきます。詳しくは、「治療手技の強さの程度、グレードについての解説」をご覧ください。

このグレード表記は主に直接法(疼痛域や制限域に向かうような刺激)による治療の強度を示すためのものです。
そして、その強度の決定は、患者の状態や反応をみながら決めていきます。

以前の記事でも触れてきた、「理学療法士が治療介入する際に気をつける臨床像」として、イリタビリティーやセンシティビティーの存在や、セビリティーの高さなどが挙げられます。

これらを考慮した場合、疼痛域や抵抗域での治療刺激はリスクを伴います。ですので、直接法(疼痛方向への治療)ならば、低いグレードであるグレード1やグレード2を用いるか、間接法(直接法の逆。次の記事で解説予定です。)が一般的です。

グレード1や2を単純に言うと、疼痛域や抵抗域には入っていかない範囲での治療刺激という事になります。
痛みを誘発しない強度でのマッサージや関節可動域訓練、モビライゼーションなどはグレード1か2と解釈できます。これは疼痛を誘発する方向、もしくは制限がある方向へ向かって治療刺激を加えている場合(直接法)のその程度が弱い事を表しています。

(もし、疼痛方向ではない逆方向への治療をしている場合(例えばポジショナルリリースなど)は、疼痛域や抵抗域に向かっているわけではないので、その程度に関してグレード表記は通常はしません。)

イリタビリティーやセンシティビティーがない場合は、疼痛域や抵抗域での治療は許されますが、患者の受け入れ状態によっては、疼痛を誘発される事を良く思っていない場合などにも、低いグレードで介入する事になるかもしれません。

学派によっては痛みを誘発する治療を推奨せず「ノーペイン」という言葉が示すように疼痛域での治療自体が選択肢にないものもあります。これらは治療者側の考え方の問題であって、そうであるべき患者もいれば、そうでない患者もいるはずですので、私自身は「ノーペイン」に拘る必要はないと思っています。

患者の反応を確認しながら治療グレードを柔軟に変化させる事が必要だと思います。その反応というのが、患者の主観や、コンパラブルサイン、疼痛関連動作、疼痛関連運動などの、今目の前に実在している現象そのものです。

これらに良い変化がみられれば、今用いている手技の強度が適している強さだという事を示してくれます。

また、このグレードを用いる理由は、セラピスト自身が患者に与えている治療刺激を記録するために重要であって、こういった患者には、このグレードでなければならないというような決まりはないと思っています。

例えば、2回目の治療に訪れた患者が、前回の治療後からより強い痛みが続いていたという場合を考えてみると、その時に行った治療がグレード3で疼痛域から無痛域を行き来するような関節可動域訓練を行っていたとすれば、それよりも狭い範囲で可動域訓練を用いるべきだと判断する事ができます。

例えば、GⅢ+で治療を行い、悪い反応を出してしまった場合の選択肢としては、

  • 疼痛域まで入るが、その程度を最小にしようと思えば、GⅢ--
  • 疼痛域まで入る事をやめる場合は、GⅡ

という事になります。また、痛いのは治療直後だけで、その後からは逆に痛みが軽くなっていたというフィードバックをもらっていれば、今回も同じようなグレードで治療を試みて、1回目の治療直後に起きた一時的な疼痛増悪が再び出現するかをみる事ができます。

もし、同じ強度を用いたのに、今回はその疼痛が増悪する反応がみられず改善のみを示した場合は、この患者の治療は進んでいると判断する事ができるかもしれません。

悪い反応も良い反応もなかったとなれば、さらに強度を上げてみようという判断ができます。

ある程度、強度を上げてもなお改善を示す反応がみられなければ、ここまでやってはじめて、「今用いている手技は無意味である」という事が言えそうです。

以前の記事でも触れた、「同じ手技をすぐに変更してはいけない」という理由の一つに、この治療強度の問題があります。

もし、手技そのものの選択と、その強度の選択を同時に行わなければならないとなると、強度の問題で改善を示す事ができないだけだったものも、手技の選択の誤りだったという判断になってしまう可能性があります。これはリーズニングエラーの一つです。

同一の手技を用いながら強度を変更していき、その強度の変化に症状の変化が相関しているかを見なければ、強度の選択はかなり曖昧なものになってしまいます。強度の選択が曖昧であるなら手技そのものの選択が当たっているのか間違っているのかの判断のしようがありません。

 

同一の治療手技で、グレードを変化させながらその手技を評価していきます。

グレード2で1分間の治療刺激

悪くなっていないが良くもなっていない

グレード3or4で1分間の治療刺激

良くなっている気がする

もう一度、グレード3or4で2分間の治療刺激

先ほどとあまり変わらない

まずは安全な治療強度で特定の手技を行いました。悪化はないからさらに強度を上げてみようと思い、疼痛域もしくは抵抗域に入るような強度で治療刺激を行っています。すると「もしかしたら良いかも」という反応がみられました。

もし、この「良いかも」という反応が、確かに良い反応であり治療刺激によって生まれている変化であると言えるなら、もう一度、そして今度は量を増やして刺激を加える事で、もっと良い反応がみられるはずです。

しかし、上記の場合は、もう一度加えてみたものの、思っていたような変化には至りませんでした。

この時の選択肢として、「さらに強い強度を選択する」という判断でも、「良い変化と思っていたが間違っていた」という判断でも、どちらでも構いませんが、ここで重要な事は、「良い反応かもしれない変化は出ていたが、現在の治療介入では量依存性に改善を示す反応は見られていない」という事実です。

ここで、この事実を把握できていれば、現在の治療強度のままで時間をかけても改善を示すはずのない治療に、限られた時間を割く事を止めるか、それでも続けようと思うのかの分岐点ができます。

(続けるのであれば、その時点からこの手技に求める効果の判断基準を厳しくする事になりますが、この点については、今回の記事では触れません。)
(また、その改善とする判断基準となるものは疼痛誘発動作・運動検査などになります。)

それらを考慮せずに、ただ、良いであろうと思っている治療手技とその強度を、なんとなく続ける事を回避する事ができます。

治療強度を意識しながら、患者の反応をしっかり見ていく事でこの刺激を続けるべきか、さらに強い刺激か、刺激を弱めるかなどといった微調整を加える事ができます。

選んだ手技が的を得ているなら、この強度の微調整に何かしら相関する反応がみられるはずです。

患者像でグレードを選択する一般理解はありますが、グレードの選択は、自分が今行っている手技の強度を微調整するために用いれば良いと思っています。

 

「グレードを変更しながら、その治療手技を評価する事」のまとめ

グレードで表現する事は、今行っている事を明確にしておき、これからのセラピストの行動を決める判断材料にするという事に過ぎないものと思っています。

この微調整を注意深く行う事で、治療強度の問題で、今用いている手技が無意味なものであると勘違いしてしまう可能性を低減できますし、改善させる事に焦ってしまい治療する事のリスクを犯す可能性も同時に低減させる事ができます。

その行動の微妙さを記録する事ができるという事で四段階のグレードを私自身が採用している理由です。

治療刺激を考えた時に疼痛が誘発される可能性がある手技を選択した場合は、患者のリアクションを考慮に入れるため、慣れてしまえば四段階のグレードは非常に用いやすいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

次の記事→ 4.直接法・間接法とは? そして、手技は何を治療しているのか?

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