問診

7.徒手療法での痛みについての問診(項目のまとめ)

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クリニカルリーズニングシリーズ3本記事は、クリニカルリーズニングシリーズ3「問診」の追加記事となっています。
シリーズ3の1作目の記事は、「問診で具体的に聴く技術 省略について」です。

徒手療法を用いる際の、初回の問診時で聞くべき項目を4つ挙げ、解説しています。

 


問診で理学療法士が知りたいこととして以下の3つが特に重要になってくると思います。

  • 痛みの状態の把握
  • イリタビリティー、センシティビティー、重症度から評価を制限して実施する必要があるかどうか
  • 大まかな予後

では、これらを把握する為に、実際に問診で聴いていく項目を以下に列挙します。多くなりすぎると読みずらいので、まず重要となる4項目を挙げています。

  1. 部位:痛みの場所
  2. 増悪因子(軽減因子)
  3. 種類:痛みの質
  4. 経過

それぞれについて解説していきます。


1.どこが痛いか(部位、場所)

  • 範囲を実際に指し示してもらう
  • 「どこが最も痛みますか?そこからどこまで痛みがありますか?」
  • 「上はどこからですか?下はどこまでですか?」

言葉の説明では、患者と理学療法士が思い描いている部位が異なる事が多いため、実際に指示してもうらう事は非常に重要です。

部位を示さずに「全部痛い」「わからない」というように答える患者の場合は、明らかに違うであろう場所を触り「ここが痛いですか?」と聴きます。
だいたいの場合、患者はそこではないと返答してくれます。そこで、理学療法士は患者の返答に続けて「では、どのあたりですか?」と聴く事で、そのような患者の場合でも問題なく疼痛部位を聴き出せます。

-解説-

答えに困る患者に対しては、まずは否定させる事によって、そこから具体的な部位を説明をしてもらえるようになる場合が多い

しっかり聞けたと思ったら、「もう他には痛い所はありませんか?」「痛みがあるのはそこだけですか?」で部位に関する質問を締めくくる事ができます。


2.どうすると痛いか(増悪因子)

  • 運動時痛か安静時痛かを確認する。
  • そして今痛いのか、痛かった時の話をしているのかを明確
  • 今この場で、患者の言う「痛み」を共有できるかが重要

そのためのシンプルな確認方法は、実際に見せてもらうことです。(機能的実証)

「では、それを見せてもらえますか?」(痛みが再現できなくても、痛みが出るとしている動作・姿勢を見せてもらう)

「痛みは出てないようですが、どうすれば、先ほど言っていた痛みが出てくると思いますか?」

これで、疼痛誘発動作に近ずくことができます。
それでも、痛みが出ない場合は、時間的な要因が関わっている可能性がありますので、

「この姿勢をどれくらい続くと痛みが出てきますか?」
「この動き(例えば歩行)をどれくらい続けると痛みが出てきますか?」

と追加の質問を行い、疼痛出現までの時間的条件を確認しておきます。

メリット:

  • 家に帰った時に実際にそれがどうであったかを確認してもらう事ができる。
  • 具体的な話ができる。
  • 本当はもう痛くなくなっている事に気づける可能性もある。

どうすると痛いかについては、運動や姿勢の条件を聴き、時間的な条件についても必要に応じて確認します。

疼痛出現に時間的条件が加わっている場合は、その時間を大まかにでも聞いておき、「わからない」と答える場合は、それを次回までの宿題とする事ができます。

セラピスト側の聴取ミスで、そこまで掘り下げなかったという事にならないように注意します。

患者の言う「この動きをすると痛い」という動作で、痛みが実際に出せたなら、再び痛みが出ている部位を確認します。

痛む場所を想起して説明している場合と、実際に今痛む最中に説明する場合は、説明内容が異なる事があります。

ここで喰い違いがあれば、もう一度、疼痛部位についての聴取に戻る必要があります。

痛み出した時に会話もできない状態や顔を強くしかめるようなら重症度が高いと判断し、後の理学療法士評価に制限を加えます。

重症度が高くないのであれば、
その痛みは、それを続けると増してくるかを確認します。→イリタビリティーを確認

その痛みは、動作を繰り返す事によって出やすくなるかについても確認しておきます。→センシティビティーを確認

重症度、イリタビリティー、センシティビティーが高ければ、その後の理学療法士評価を手短に、そして安全面を考慮した上で行う必要があると判断できます。

また、痛みを誘発するような検査を行う前には、
検査による症状の増悪が起こらないように考慮するが、その可能性があるという事と、検査をする必要性(意義)について、丁寧に説明しておく必要があります。

これを納得できない患者の場合は、検査はこの段階では行わない選択も1つです。
検査を実施せずに、安全と思われる物理療法のみの治療や、荷重制限・安静度を高めるなどの医学的管理下に置くなどです。

2-2どうすると痛くないか?

  • 「常に痛む」という患者の場合は特に有効な質問です。
  • それ自体が治療の方向性をある程度決定する場合も多々あります。

「痛くなったらどう対処しますか?」

答えに困る患者は、具体的な例をいくつか理学療法士側から出してあげます。

この場合は、理学療法士側が求めている答えの逆を聴く事をまず優先すべきです。

理由としては、返答の誘導に繋がる可能性があり、問診結果の確からしさを損なうためです。

例:「早歩きすると改善するとか…」(患者が喋り出すのを待つ)
→「いや、座って休憩する事が多いかな。」
(これは、クローズドクエスチョンに見えるオープンクエスチョンです。)

患者は、クローズクエスチョンについて否定した上で、患者の自由な言葉で、どうすると痛みが和らぐかを話してくれます。

ここで、もし「座って休憩すると痛みは和らぎますか?」と聞いてしまい「はい、そうです。」との返答した場合は、

この答えが、ただの会話の流れで答えたものか、本当にそうなのかが曖昧になります。常識的なクローズドクエスチョンは、返答者は特に考えずに答えてしまう可能性が高いので注意が必要です。

それでも、答えに苦しむ場合は、理学療法士が立てている予測をダイレクトにクローズドクエスチョンで聴くしかありません。

「座って休憩ですか?それともストレッチなどをしたりしますか?」

このような形で得られた情報は、情報の有効性としては価値が低くなりますので、他の情報と合わせて、その信憑性を総合的に判断する必要があります。


3.どのような痛みか?(種類)

痛みを患者の言葉で表現してもらいます。

そのメリットとしては、様々な症状を訴える患者の場合は、今後特定の痛みの事を聴く際にどの痛みの事を聴こうとしているのかを患者が把握しやすいからです。(痛みの名詞化)

また、疼痛検査中にたまたま出た痛みと日常生活上の痛みを区別できます。

-使用例-

疼痛検査を実施→疼痛誘発→「この痛みはズキズキ疼く、あの痛みと同じような痛みですか?」

yes:疼痛を再現
no:検査で偶発された痛みの可能性

その他には、痛みの質から機能異常に対する仮説を立てる事もできます。

-補足-

特定の痛みを共有する方法として、その他の方法としては、

  • 痛みの出方「しゃがみ込んだ時のあの痛みと似ていますか?」
  • 痛みの場所「お尻から膝裏に出るというあの痛みと似ていますか?」

というように、疼痛を名詞化する方法は、痛みの質だけではないので、患者が理解しやすいものを選択します。

「どこ?」「どうすると?」「どのような?」この3つが特定の痛みを話す時のキーワードになるものです。

患者によって、用いやすいキーワードは異なります。患者が受け入れやすいものを理学療法士側が選択する必要があります。

増悪因子と痛みの質を聴く順番について

問診では、まずは、どこが痛いかを明確にし、
次に「2.増悪因子」か「3.痛みの質」のどちらかを先に確認します。これについては順不同で構わないと考えています。

2→3の順番の場合はこうなります。
「腰の痛みをどうすると痛いか?」→「それはどのような痛みか?」

3→2の場合はこうです。
「腰の痛みはどうような痛みか?」→「それはどうすると出てくるか?」

一般的なテキストでは、後者が推奨されていますが、臨床的には大きな差はないと思っています。しかし、個人的には、前者を多用する事が多いです。(2→3の順番)

理由としては、動き方によって痛みの質が違う事があるからです。

-例-

患者「腰を曲げると痛い、反らしても痛みが出る。」

PT「曲げる時はどのような感じですか?反らす時の痛みとは同じ感じですか?」

患者「曲げる時は腰がつっぱる感じ、伸ばす時は締め付けられて重苦しい感じ」

最初に痛みの質を聞かれると、疼痛部位が複数ある場合は、患者はどう答えていいかわからず、返答に困る事があります。

また、理学療法士が運動や姿勢などの機能的な問題を治療対象にしている以上、

「部位」+「運動や姿勢の条件」についてのそれぞれの質を確認する事が、個人的にはベターだと思っています。


4.症状の経過

今まで話してきた痛みが、どのような経過で今に至っているのかを聴きます。

  • どんどん良くなって今の状態
  • 一週間前よりも酷くなって今の状態
  • 1年前から今の状態

経過によって今の症状に対するアプローチは変わってくる事が予測されます。

どんどん良くなって今の状態であれば、そのまま良くなる事が予測できるので、理学療法士は余計な事をしないほうが良いかもしれません。疼痛を誘発しすぎて、結果的に悪化(回復プロセスを阻害)させてしまう危険性がある事を理解していなければいけません。

酷くなっている状態の時は、疼痛を誘発させる検査を行うよりも、現時点でできる応急処置が急務となる場合があります。

余計な疼痛誘発はさらなる悪化を招く危険性があり、
基本的にはこの状態では深入りしない(疼痛検査を行う危険性を考慮すべき)ほうが得策です。

一年前から同じ(しばらく同じ状態が続いている)という場合が、まさに理学療法士評価の対象となる状態と言えると思います。

基本的には症状の部位、出方、質を聞いて、現時点での疼痛の状態を共有できた段階で、それから「経過について」を確認するという順番が、誤った情報が入ってくる事を防げます。

患者は痛み出した最初の頃の話や、つい最近の1番酷かった時の症状を話したがる傾向にありますが、それは重要な情報ではない可能性もあります。

まずは、今の状態を把握し、それから過去の話に入る方が、情報の混乱を招きません。

そして、それから「症状の経過」を聴く事によって、ある程度の未来が予測する事もできます(症状のベースラインの把握)。


その他にも聴くべき事はあります。

例えば、

  1. 症状の順位付けと治療目的(患者の価値観)
  2. 特殊な質問

などです。

1.症状の順位付け

症状が複数ある場合は、
症状に順位をつける必要があります(価値観の確認)。→患者は何から取り組みたいか?

例「右腰殿部と左膝が痛い」

この2つの症状は関連性があるかもしれないし、無いかもしれません。

もし関連性がある場合は、病態としての関連性か、機能障害としての関連性か、が考えられます。

病態例:腰部疾患により下肢症状が出現→両下肢に出ているが右は殿部で左は膝に出ているという可能性

機能障害例:腰部痛があり、それを代償するために歩容を修正→結果的に左膝へメカニカルストレス

この段階では、早急な判断ができないため、どちらを患者自身が重要視しているかを確認しておきます。

  • 「日常生活上でより困っているのはどちらですか?」
  • 「より痛みに困っているのはどちらですか?」
  • 「どちらから治療してほしいと考えていますか?」

症状の順位付け(患者の価値観の確認)は行うが、クリニカルリーズニングにおける基本は、複数ある症状の場合はそれが1つの原因によるものであると考えます→これを「オッカムの剃刀」と言います。

-オッカムの剃刀についての解説-

咳が出て、高熱が出て、嘔吐があった患者→インフルエンザを疑う

咳は「扁桃腺炎」、高熱は「インフルエンザ」、嘔吐は「食あたり」というような別々の仮説は立てません。

「オッカムの剃刀」を理学療法士は、病態と機能障害の両面から考える必要があります。(医師は病態のみから考えている。)

また、治療をどのように考えているかについても確認する必要があります。

例えば、「定期的に通院しながら治療したい」、「医者にリハビリに行けと言われたから」という、この2つでは治療の進め方が異なります。

これは、ナラティブリーズニングの一部なのですが、この記事で解説しようとするとメインテーマがブレるので割愛します。別シリーズでナラティブリーズニングの項を設けたいと思います。

2.特殊な質問

  • 健康状態についての質問
  • レッドフラッグやその他のフラッグの有無に関する質問
    (これについても、ここでは割愛させて頂きます。)

記事のまとめ

これらの問診の項目を列挙したものは、私の経験上「このように問診を進める事が臨床的に効率が良い」と思っているものです。エビデンスはありません。

また、問診は経験を通して、そのスキルを高めるものなので、今後変更する箇所が出てくるかもしれません。

また、この記事を参考にしようとした時は、自身で解釈できる範囲に留めて下さい。質問の意図をあまり理解せずに、また特別な意図を持たずに形だけ真似ると非常に危険です。

文面だけを読むと、中には患者に失礼な言い方や対応の仕方になっている箇所もあるかと思います。

これは、問診を行う上で私自身が重要と思っているのでこういった方法で確認をとっています。その時は、私なりに丁寧に確認をとるように心がけていますが、ブログ内では、箇条書きのような形で解説していますし、文面だけだと伝わらないものもあるかと思います。

自身で、解釈できる範囲に留めて参考にして頂けたら幸いです。また、問診が上手くいかなかった時に時々見返してみると、解釈しやすくなるかもしれませんので、何度か読み返して頂けると嬉しいです。

書いているうちに、またまた長すぎる記事となってしまいました。すみません。最後まで読んで頂いた方は、本当にありがとうございました。

クリニカルリーズニングシリーズ「問診」のアーカイブページはこちらから。

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