ネット版 勉強会(症例報告、ケーススタディー)

症例報告②「肩インピンジメントに対する運動器エコーの実際」

更新日:

肩インピンジメントに対する運動器エコーの実際

ネット版PT-OT勉強会の第二弾は、関西の整形外科クリニックの理学療法士、林洋平さんです。徒手療法を用いた治療を行っているのですが、この徒手療法にエコーを活用しながら臨床に取り組んでいます。

現時点では、導入してから月日は経っていないようですが、「運動器エコーを活用しだした」という話しを聞いてから、時々連絡を取り合っては、その実際を教えて頂いていました。

なかなか実態のつかめない生体内の動きをエコーで視覚化しながら、学ばれた徒手療法を活用している林さんの話はとても面白く、この勉強会を開催するにあたり、是非、発表者の1人になってほしいと企画当初から思っていた方です。

とても話しやすい方で、徒手療法家特有の「俺、凄いぞ感」を一切出さずに、それでも臨床は凄く拘りを持って取り組んでいて、かなり好感の持てる方です。記事自体からもそういった感じが読み取れると思います。

超音波を理学療法に応用するスペシャリストとしてではなく、私たちが超音波を利用しようと思った時に相談できる友人や同期のような存在として、当勉強会にお招きしていますので、記事を読んでみて、聞きたい事、相談したい事があれば、是非コメント欄を利用して聞いてみて下さい。では、「肩インピンジメントに対する運動器エコーの実際」を発表して頂きます。

 


肩インピンジメントに対する運動器エコーの実際
辻秀輝整形外科 理学療法士 林洋平

はじめに

今回話をもらった時、ブログ上で症例発表が初めてなので
ブログしたことないし、よくわからないし、大丈夫かなと思いましたが、
住んでいる地域が遠くても理学療法のディスカッションができることはめっちゃ楽しいやろなーと思い、すぐ引き受けました笑

普段は整形外科クリニックで理学療法をしています。
最近超音波装置(エコー)を利用しているなかで、自分自身が組織や機能解剖学が以前に比べ深く理解できるようになり、徒手的に行う理学療法が見えない世界から見える世界に変わってきているなと感じています。

特にエコーと徒手療法の融合ができたらおもしろいなと感じて臨床で取り組んでいます(^ ^)

ここでその症例の発表しま〜す

症例紹介

H28.2月 初受診  20代前半 男性
中学生の時サッカー(GK)をしていて、その時痛めてから(具体的には不明)
肩の調子がおかしい(腕をあげると音がなり痛い)

S)

rt omalgia+(数年前〜)、しびれ−

O)

円背+ bil肩甲骨protraction+ rt肩甲骨下制+ T1〜4の伸展制限+
rt Howkins sign+ impingement+ crepitus+
ROM:rt elevation 170°abdaction 170°I/R Th6
SSPテスト+ 前鋸筋筋力4−(他問題となる筋力低下なし)
rtスピードテスト− rt肩甲骨テスト+(crepitus−、impingement−)
rt肩甲骨周囲筋の過緊張+
rt肩甲上腕関節の不安定性−

《考え方》

カルテに記載されるインピンジメントという病名はよく知られていますが、rotater cuffのインピンジメントとは診断名ではなく臨床症状であることを、理解する必要があります。

(インピンジメントに関する解説ページを別ページで制作しています。)

例えば教科書的に肩関節周囲炎のリハビリやインピンジメントのリハビリをそのまま治療に当てはめることは根拠なく当てずっぽうに治療しているのと同じようなものです。

まずは、仮説を立て、どの組織がどの方向に何によって制限や影響を受けどういった症状が出ているのかを見つける必要があります。
Impingementは外側(一次的or二次的)、内側に分けられます。詳細は省きます。

今回のケースでは仮説として主に、

  1. acromionなどに骨棘などの異常がないか
  2. rotater cuffの病変はないか
  3. 肩甲上腕関節の不安定性はないか
  4. LHBの障害はないか
  5. 肩甲骨の動作障害はないか
  6. 頚椎神経根障害はないか

などがあげられます。

理学療法士が介入できるものとして、2〜6(3,6は難しい場合もありますが)があげられます。
そして検査・評価をしてさらに絞り込んでいくわけですが、触診やスペシャルテスト種々の検査を行いこれが原因だと100%だと確定することは非常に困難です。

今回のケースは単純X線では異常なかったので1は除外されます。MRIなどは撮影していないので、筋・腱の病変は確認できません。そして、いくつかの徒手的な検査の結果から肩甲骨の動作障害は明らかでしたがSSPにも問題があるのでは?と考えました。

3D的にどこでどのような障害が起きているのか、知識技術経験からの想像でしか確認することはできないので、最終的に超音波装置(エコー)を用いて評価を行うことにしました。

結果、損傷しているのか?癒着なのか?なんらかの組織が肥厚しているのか?詳細な状態がわかることで物理療法を使用するのか?徒手療法か?運動療法か?さらに、徒手療法でもモビライゼーション、筋膜リリース、ストレッチかなど 選択肢が絞られていきます。

筋腱が損傷しているのと、していないのでは治療方法も変わってきます。
理学療法士が外来リハビリで限られた時間の中で原因を突き止め結果を出すことは非常に大変なことです。しかし、的確な検査・評価を行うことが、結果につながる最短の近道と考えます。

 

《エコー画像》

右側(※ スマホだと下)の写真は静止時のSSPです。
(左が左のSSP、右が右のSSP)
エコー上特に異常は見当たりません。
image

これで筋腱の損傷の可能性は低くなりました。

《エコー動画による評価》

動画の一部を切り取っており少し撮り方が下手なのですみません・・・
肩関節を外転(active)してもらい挟み込まれるかどうかを確認しました。
左肩を外転してもらいます。(左側の画像です)

撮り方はまだ未熟なので少し見づらいかな?と思います。



image

160°付近
SSPが肩峰下に綺麗に滑り込んでいます。
image

170°
SSPが肩峰下に滑り込み見えなくなりました。
image

エコーを使うまでは身体の内部の状態を3Dに確認することはできなかったので、
エコーを使い出した時は感動しました笑
最近では画像もクリアで血流なども確認できるためとても便利です。

次に右肩です。外転してもらいます。
撮り方の角度が悪かったので
少し白くなっています。すみません。
(右側の画像です)



image

90〜120°付近
SSPが肥厚しています。
image

140度付近
肩峰下に滑り込むことができず
一部が塊になりました。
image

160°付近
塊が押し込まれるように肩峰下に入る時
音(コキというような)がなりました。
image

170°
滑り込んでいきました。
image

Impingementは肩峰下に衝突や挟み込みと言われていますが、具体的にこのような結果が出たことは少し驚きでした。エコーを使用している治療家も多いので珍しいことではないかもしれませんが、学校では学ぶことがなかなかできないことだと思います。

 

評価の続きです

エコー検査)静止画:SSP、ISP、LHBに損傷や炎症などの反応なし
動画:abd160°付近でcrepitus+の時、SSPがacromionに挟まれている.

A)

  • 構造的に問題はなく局所の損傷や神経症状も見られないため、機能的な問題が一番の原因である可能性が考えられる
  • 胸椎伸展制限、肩甲骨の下制(前鋸筋力低下)、肩甲骨周囲の過緊張により肩甲骨のコントロール不全などのインバランスが生じ症状が出ていると考える

P)

  1. 肩甲骨周囲のリラクゼーション
  2. 胸椎伸展のモビライゼーション(徒手、ストレッチポール、バランスボール)
  3. 良姿勢指導
  4. 前鋸筋の筋力ex(軽い負荷からの前鋸筋ex〜バランスボール上で腕立て伏せ)
    (順番にプログラムを立て実施)

 

《結果》1ヶ月で5回の介入

肩甲骨protraction− rt肩甲骨下制− T1〜4の伸展制限−
肩関節可動域正常、impingement−
となりリハビリ終了

今回のケースは、複雑な影響が少なく治療はスムーズにいった症例ですが、このような症例でも検査が不十分で曖昧なまま治療して治っても、なぜ良くなったかわからない状況になります。

すると、次に同じような症例が来ても経験として蓄積されていきません。また、検査が不十分だと、治療順序が曖昧になる可能性があり、治療期間が延びたり逆に悪化させてしまう可能性もあります。

まずは可動性を出しalignmentを治し、筋が動きやすく発揮しやすい環境を作り、再教育させていくことが重要です。(可動性が出ないのに筋力トレーニングをしてもimpingementが生じ症状が悪化することが考えられます)

もし、今回のケースにSSPなどの筋腱の損傷が見られた場合は、損傷させている原因を考え(alignmentかもしれない)組織に対する治療も行いながら、リハビリテーションを進めていくことになります。

 

《まとめ》

徒手的に技術が向上すると手の感覚でいろいろなことがわかり、治療できてしまうかもしれませんが、特に経験が浅いとよくわからないまま治療をしてしまうことが多いと思います。そうならないためにも考えて、検査し治療していくことが大切です。

エコーなどの検査機器が使える環境にあるなら使ってみることでいろいろな発見があり、知識や技術がさらに向上すると思います。

今回は詳細な検査手技、治療手技や治療方法、治療時間は載せていませんがもちろん重要です。理学療法士はクリニカルリーズニングで考える能力、検査能力、そして治療技術が必要になってくるのでこのどれが欠けても治療はうまくいかないと思います。

まだまだ、みきれていないところや検査できていないところなどあると思いますが、
ご覧いただきありがとうございます( ^ ^ )/

 


林さん、お忙しい中、記事制作をして頂きありがとうございました。

林さん有難うございました。本投稿記事「肩インピンジメントに対する運動器エコーの実際」をお読みになった方で、林さんに質問がある方は、下のコメント欄に書き込んで頂けると、一週間程は林さんからの返信があるかと思います。

当企画は、閲覧者が質問しやすいように、匿名でのコメント記入ができるようになっています。質問は7月17日(日)までの受付となっています。質問への返答は少々遅れる事もあるかと思いますが、その点はご了承下さい。

【症例報告②の質疑応答は終了しました。】

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