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理論と技術

筋膜の異常(癒着、凝り、高密度化)を正常な状態に戻す

更新日:

「筋膜」に焦点を当てた治療法に、筋膜リリースや筋膜マニピュレーションという徒手療法の技術があります。

これらの治療技術をシンプルな言葉で説明すると、筋膜を異常な状態から正常な状態に戻すための技術となります。

私も、実際に筋膜リリースや筋膜マニピュレーションと呼ばれるような治療を行ってきましたが、これまでは臨床で起こる結果・現象だけが全てで、下手な理論付けはリーズニングエラーを引き起こすと考えていたので、仮説の上に仮説を立てるような不安定な理論づけは避けてきました。

しかし、勉強会などでお話させて頂くなかで、中で起こっているであろう事を聞きたがる人が大勢いました。

もともとは、介入する組織すら限定せずに、あくまでも皮膚上を介してコンタクトし機械的刺激を加えているだけと考えるようにしてきたので、療法士へ話す時は、あえて筋膜リリースとか筋膜マニピュレーションという言葉はあまり使わないようにしていました。

ちなみに、筋膜リリースや、筋膜マニピュレーションは、介入組織として「筋膜」を想定していますが、テクニック自体には違いがあると理解しています。

名称 強度 特徴
筋膜リリース 弱い 水平方向への伸長(青矢印)
筋膜マニピュレーション 軽い痛みを感じる程度  圧刺激・振動(黒矢印)

私自身は、どこかの学派に属しインストラクターになっているわけではなく、これらの名称を用いて指導する立場にはありません。ここでは、手技名に囚われ過ぎず、それぞれの言葉を使う時は、上の表のような強度・特徴を有した機械的刺激の入れ方という様にイメージしてもらえると幸いです。

徒手療法を用いた際の中で起こっているであろう事についてですが、最初は「小さい事は気にするな。大切な事は現象を見続ける事だ。」なんて言ってきましたが、多少なりと必要かなと感じる部分があったのも事実で、今はできる範囲で私自身が行っている事を説明し、今の段階で話せる事は話すべきかなと思っています。

「できる範囲」というのは、私自身の伝える能力の限界という意味です。「ここまでしか教えないよ。」なんて意味ではないので、よく分からない部分があれば、お問い合わせフォームでも勉強部屋(ブログ)の方にでも質問して頂けたら嬉しく思います。

今後は、勉強会などで説明を求められた時には、「この記事を読んで!」と言って逃げる道具に使うつもりなので、分かりにくい部分や間違っているよ!という箇所があれば、どうぞご指摘下さい。

では、そろそろ本題に入っていこうかと思うのですが、、、。

「筋膜を異常な状態から正常な状態に戻す」というのが、どういった事を指しているのかを説明するために、まずは「筋膜の異常」がどのような状態なのかを説明する事からはじめていきたいと思います。

実際のアプローチについては、ケース(主訴:腰痛、30代男性)を提示して解説しているので、手っ取り早く具体的なアプローチの手順を知りたいという人は、記事後半までいっきに飛ばし読みして下さい。

 

筋膜の異常とは? まずは筋膜の説明から、、、

筋膜の異常を理解する時に重要になるのが、まずは筋膜の構成要素を理解する事です。ここでは、「線維(コラーゲン繊維とエラスチン繊維)」と「基質(ヒアルロン酸と水分)」の二つを取り上げて説明します。

 

コラーゲン繊維とエラスチン繊維

筋膜組織は主にコラーゲン繊維とエラスチン線維に分類されます。

このコラーゲンという線維は、組織の骨組みとなり、「形(構造)」を作る役割を担っています。コラーゲン繊維は、早い張力には強く、弱い張力により伸びるという性質を持っています。

このコラーゲン繊維が、筋膜リリースを説明する上で重要となりますので、「形(構造)を作る」という事と「早い張力には強く、弱い張力により伸びる」という二点を覚えておいて下さい。

もう一つの線維としては、エラスチンという繊維が存在し、エラスチン線維はいわゆるゴムのような性質を持っています。黄色の線維でコラーゲン繊維に絡みつき組織に弾性を与えています。エラスチン線維は張力を与えると伸びるという性質を持ち、主に筋組織に多く含まれています。

基質

グルコサミノグリカン(酸性ムコ多糖類)からなる「ヒアルロン酸」と呼ばれる基質が重要となるのですが、これは水分含有量が多く、粘性のある液状のものです。

ヒアルロン酸は疎性結合組織の内部に存在し、コラーゲン繊維の潤滑剤として機能し、筋肉の収縮や関節運動時の筋膜の滑走に関与しています。

筋膜の異常を説明する上で、ヒアルロン酸が非常に重要になってきます。ヒアルロン酸に問題があれば筋膜の滑走性に影響を及ぼすという事を理解しておいて下さい。

ここから、いよいよ「筋膜の異常」について解説していきます。

 

筋膜の癒着、滑走性低下、高密度化について

過度な運動や組織損傷による局所の酸化(PHの低下)によって、先ほど出てきた筋膜周囲のヒアルロン酸の粘性が増大します。

ヒアルロン酸は粘性が強くなると、組織を密集させます。

組織の密度が増加すると水分を押し出すようになるので、さらに水分が少なくなり粘性が増大し筋膜の滑走性はより悪くなります。

もちろん、硬くなると血流も悪くなります。その周辺組織には水分補給が行われにくくなりますので、水分は失われたままとなり、この状態になってしまうと、正常な回復のサイクルが途絶えてしまいます。

筋膜の高密度化が一度起こってしまうと上記のような悪循環に陥りやすく、硬いところは硬いままとなってしまう可能性があるのです。

この高密度化が起こっている部位が、施術を行う対象箇所になるのですが、この正常な回復のサイクルが途絶えた状態を探し出す事は、そう簡単な事ではありません。

 

筋連結により身体の離れた部位へ問題は波及

このヒアルロン酸の粘性が高くなり、滑走性が悪くなっている箇所が筋膜の高密度化が起こっている部位であり、その高密度化した部位は関連しあう筋膜の動きにも影響を及ぼします。

筋膜の滑走が身体の動きを作り出しているので、筋膜の滑走性が悪くなった場合に身体に起きる現象としては「身体の可動性が低下する」となりそうですが、それよりも先にまずは「代償」が起こります。

「代償」とは、他の身体部位が過剰に努力する事によって動けていない部位を補うことで、身体の動きを維持している状態を説明する言葉です。筋膜の高密度化が起こっても、すぐに表面的な問題とはなりにくく、この時点では代償によって影を潜めています。

「代償」は、他の部位を酷使する事を意味します。これは、過剰使用(過用症候群)と言われています。腹筋運動をした時に、沢山の回数を実施する事も過剰使用ですが、上部腹筋ばかりを使うような腹筋のやり方をしている場合は、上部腹筋の過剰使用となります。

この過剰使用は、特定の部位だけが無理をしている状態といえ、この過剰部位が新たな筋膜の高密度化が起こる可能性のある部位となっていきます。

ここまでを少しまとめます。

  1. 痛めた組織に悪循環が起こり、硬いところは硬いまま
  2. 硬いところを補おう(代償)として別の場所の過剰使用(過用症候群)が起こる
  3. 過剰使用部位は酸性に傾き、ヒアルロン酸の粘性増大 → 筋膜の高密度化
  4. 1〜3を繰り返しているうちに、代償がきかなくなり、「身体の可動性の低下」が出現するようになる

最初の悪循環がどこかで断ち切れれば問題が大きくなる事はありませんが、悪循環が起こってしまった部位は、外部から回復のきっかけを与えないと、他の部位へも問題が波及していき、いよいよ「身体の可動性が低下している状態」が生まれます。

この状態にくると、四肢の運動検査をした時に、「右の肩を挙げにくい」「右の股関節を曲げにくい」などの結果が出るようになり、体幹や骨盤の動きにも影響が出て「身体を右に捻りにくい」とか、「腰を反らしにくい」というような目に見える状態になっていきます。

しかし、各々の関節自体に構造的な問題があるわけではないので、肩や股関節の画像検査を行っても、硬くなっている原因が見つかる事はありません。

怪我をしたわけではない、もしくは既に治っているはずなのに、姿勢に明らかな非対称性がみられたり、四肢の運動制限が出現している場合は、身体の複数の部位に筋膜の高密度化が出現し、それに付随した筋膜の緊張バランスの変化が生まれている可能性が高いです。

付随した筋膜の緊張バランスの変化とは、アナトミートレインや筋膜ラインなどと呼ばれる、筋肉同士の連結があるユニット全体の可動性の低下・滑走性の低下・柔軟性の低下として理解する事ができます。

 

筋膜の異常と痛みの関係

筋膜の高密度化が起こり滑走性が低下している部位を「痛い」として感じる人もいれば、滑走性が低下している周辺部位に痛みを感じたり、代償によって過剰使用が起こっているところを「痛い」と感じる人もいます。ここでは解説していませんが、関連痛の存在も考えると、「痛い」だけで筋膜の異常がどこに隠れているかを探す事はかなり難しいと言えます。

症状が強くなると、痛いところが悪い場合は多いのですが、「ある程度、動けてはいるけど痛い」という場合は、痛い場所=悪いところではない可能性があります。

高密度化が起こっている部位については、神経の過敏性が増しており、もし普段の生活では自覚していなかったとしても「押されると痛い」という状態になっている事がほとんどですが、「押すと痛い=筋膜の高密度化」とは限らず、過剰使用の段階で痛いと感じているだけの場合もあります。

  • 高密度化 → 押すと痛い可能性
  • 押すと痛い → 高密度化の可能性

ちなみに、過剰使用の段階であれば、マッサージやほぐす等の外部刺激を加えるよりも、休めてあげる事(保護)が重要となります。

逆に、高密度化が起こっているのであれば、外部から取り除くきっかけをつくってあげる必要があり、その方法が「筋膜マニピュレーション」となります。

 

「筋膜の異常(高密度化)」に対し、ヒアルロン酸の改善が重要

ヒアルロン酸の改善に関する研究では、

  • 温度の上昇・血流改善
  • 組織のアルカリ化

この二つが重要とされています。

ヒアルロン酸の熱による反応は36℃以上から40℃の間で徐々にゲル状からゾル状へと変化していくことが研究で証明されています。

ゼラチンを考えると分かりやすいのですが、ゼラチンをお湯に溶かした状態がゾル状(液体化)と言えます。冷やすとゼリーになりますが、ゼラチンのゼリーのような半固体の状態がゲル状と言えます。

つまり、筋膜の治療に重要な視点として、治療を行う組織の温度を意識する必要があります。(組織のアルカリ化については後述します。)

 

すでに身体の運動制限が起こっている場合の対応

臨床的には、身体の運動制限が起こっている事をきっかけに、筋膜の高密度化の存在を疑うきっかけとなりやすいのですが、運動制限が出ている状態とは、すでに「代償」がきかなくなった状態と考える事ができます。

ですので、療法士のもとに身体の不調を訴えてきた時点で、すでに何らかの運動制限が起こっている場合がほとんどです。

問題の最初は、筋膜の高密度化だったかもしれませんが、身体のバランスが悪くなる・可動性が悪くなるのは、最初に高密度化した部位を代償しながら、付随した筋膜の緊張バランスの変化を起こしている状態なので、筋肉同士の連結があるユニット全体に問題が広がっていると考えられます。

ですので、根本原因の筋膜の高密度化した部位を取り除いても、多くの場合で、付随して起こった二次的な問題はそのまま残っている状態となります。

これが、いわゆる「筋膜の歪み」が起こってしまった状態と考えます。

もし、二次的な問題が軽度であれば、徐々に戻っていく可能性もありますが、筋膜に含まれるのコラーゲン線維は、組織の骨組みとなり、「形(構造)」を作る役割を担っているので、二次的な問題(歪みが起こった状態)は、そのまま維持されてしまいます。

この歪みに対するアプローチが「筋膜リリース」です。

 

コラーゲン繊維に対しては、弱く持続的な伸長刺激が重要

コラーゲンは、早い張力に強く、弱い持続的な張力により伸びるという性質を持っています。

筋膜に起こった歪み(骨組みの歪み)を改善させようと考えた場合、弱く・持続的な伸長刺激を加えるアプローチが有効です。

また、垂直方向への刺激と摩擦刺激や振動刺激(多方向への刺激)を加える方法よりも、歪んでいるのを戻す方向への(一方向性の)持続的な伸長刺激を加え続ける事が重要になります。

つまり、筋膜マニピュレーションやトリガーポイント療法のような治療よりも、筋膜リリースが二次的な問題に対するアプローチには重要という事が言えます。

 

筋膜の歪みへのアプローチは「一方向性」

特定の部位が硬くなる事(高密度化)により、関連する部位の筋膜の滑走性が悪くなり歪みが起こった状態となりますが、この歪みを、より歪む方向へ動かすと、身体の運動制限は悪化します。

悪化する方向と逆方向へ動かすと、運動制限は改善します。

歪みを評価する方法としては、この運動制限の改善と悪化を適宜確認しながら、どこの方向へ動かすと運動制限が悪化し、どこに動かすと改善するかを評価する事が重要と言えます。

身体は三次元なので単純に評価する事はできませんが、筋膜の高密度化が起こった場所に凝集するように関連する筋膜が引っ張られている事が多いと考えています。

 

離れた部位B高密度化A離れた部位C

 

  • 高密度化Aに対しては、マニピュレーション
  • 離れた部位Bには、左方向(←)への筋膜リリース
  • 離れた部位Cには、右方向(→)への筋膜リリース

上記のように、高密度化していると思われる部位(A)と、その影響により歪んだ部位(BとC)に対しては、アプローチする方向が異なってきます。

もし、筋膜リリースだけを行っても、その歪みを作り出している高密度化した部位が消える事はないので半永久的に歪みを持続させてしまいます。

では、高密度化した部位を先に治療すれば良いのではないかと思いますが、この時点で高密度化した部位を探し出すのは至難の技です。

筋膜の異常と痛みの関係の項でも説明しましたが、患者が言う痛みが、高密度化している部位Aを「痛い」と言っているのか、その影響を受けている部位Bなのか、はたまた反対方向の部位Cなのかは分からないというわけです。

なので、「痛い部位」から、症状を引き起こしている原因部位を想定するのが難しいわけです。

 

高密度化の存在を疑うきっかけとなるのが、身体の運動制限や、姿勢の非対称性などになるので、高密度化している部位を探す前に筋膜の捻れの状態を評価していく事が重要となります。

 

筋膜の高密度化が起こった部位に対するアプローチの視点として、もう一つの重要な点として挙げた「アルカリ化」についても説明した上で、具体的なアプローチ方法について解説したいと思います。

具体的なアプローチ方法としては、

  1. 筋膜の歪みを評価する。
  2. 筋膜の高密度化が起こっている部位を探す。
  3. 筋膜リリースと筋膜マニピュレーションを併用し治療を行う。

という流れを実際の症例を用いて解説していきます。

「アルカリ化」なんてどうでも良い、早くアプローチを見たい!という人はこちらをクリックして下さい。

 

順番よく読んでくれる方はこのまま読み進めて下さい。▽

 

アルカリ化 = 酸性に傾かせない事が重要

身体のペーハー(以下、PH)は、PH7.35から7.45の間が基準値とされており、血液の正常なPHの値については、6.8から7.8の範囲で調整されています。ちなみに、血液は弱アルカリ性が一番良い状態とされています。

PH自体は、自動調整するメカニズムが備わっているので、セラピスト側がアルカリ性に傾かせようとするような働きかけをするというよりは、酸性に傾かせる要素を取り除く事が重要となります。

 

反復炎症による血流改善はNG

身体の局所に炎症反応が起こると、血液は部分的に酸性になります。通常の炎症の過程は、組織治癒に貢献しますが、長期的な炎症や、反復する炎症は基質の高密度化を起こさせます。

高密度化を起こしている部位に、局所の炎症を再び引き起こすと、組織温度の上昇と血流改善効果が見込めるものの、持続的な炎症が引き起こされる事により局所は酸性に傾きますので、高密度化が起こっている部位に強い刺激を用いて意図的に炎症を起こすような治療はあまり積極的に行われるべきでないと考えています。

停滞してしまった組織の治癒過程をもう一度再スタートさせる目的で、限局した部位に炎症反応を起こさせる場合もありますが、この場合は数十分後から24時間程度で痛みが最大に達し、2日以内には完全に終息する程度の強度に調整し、数日後にはもともと感じていた症状が改善しているかを確認します。

軽度の炎症症状が改善するとともに、もともとの症状が改善しない場合は、繰り返し同じ部位への炎症を起こさせるような治療を行うべきではありません。

第一選択は、組織炎症を引き起こす事なく、施術中の摩擦(フリクション)熱や、物理療法による温熱療法による血流改善が重要であると考えます。

 

糖質過剰摂取NG

血液中に取り込まれた糖分は、ミトコンドリアで酸素と反応してエネルギーを作ることに使われます。しかし、糖質が過剰になると、酸素と反応しないでエネルギーを作るために、乳酸が作られやすくなります。

乳酸が溜まると、細胞および組織は酸性に傾きやすくなります。

 

無酸素運動NG

激しい運動は無酸素状態になりやすく、乳酸を作り局所の組織を酸性に傾けます。息が上がらない程度で、しっかりと安定した呼吸ができる程度の運動が良いと言えます。

ストレッチする際にも、強く伸ばそうとして息をこらえるたり、変に力みが入ると逆効果となる可能性があります。

また、筋肉中には水分が多く含まれています。筋肉が少なくなると、体内の水分をキープしておける場所が少なくなってしまうので、ある程度の筋力を維持するための運動は必要になります。水分量が少なくなると前述したヒアルロン酸の粘性が高くなってしまい、高密度化を促進させてしまう可能性があります。

運動せずに休んでばかり、という状態が続くと筋肉量は減少し、働きも弱くなってしまうので、回復した筋膜組織をしっかりと動かしてあげる事は、良い状態を保つために重要となります。

 

精神的ストレスが強い状態もNG

過度なストレスは、交感神経を優位にします。それにより、大量の活性酸素を発生させやすくなり酸性へ傾ける要因になります。

身体に痛みを抱えていると、それ自体が精神的ストレスの原因になる場合もあります。

お気持ちはわかりますが、身体症状に強く悩んでしまうと、かえって自然治癒力を半減させる事になってしまうので、「痛み」や、「身体の不調」で精神的に追い込まれないように精神をコントロールする力も必要になってきます。

 

ここで説明した「酸化させない働きかけ」は、実際の効果が分かりにくいものです。どれくらい意識できればOKとはなかなか言えないものです。

個人的には、「こんな要素もあるんだな」くらいで理解しておけば良いのかなと思っています。

例えば、糖質制限についてですが、過度な糖質摂取が良くない可能性があるというだけで、「糖質をとると筋膜に悪い」という意味ではありませんし、無酸素運動についても「無酸素運動をすると筋膜に異常が起こる」というような事ではないので過度な解釈には注意して下さい。

 

case:腰痛、右肩・右股関節の可動域制限と筋膜の関係性

慢性的な腰痛を抱えており、四肢の運動制限をチェックすると、右肩の屈曲制限と右の股関節の屈曲制限が出現している方です。

肩関節の屈曲制限が分かりやすかったので、これをプレ・ポストテストで比較しています。

プレテスト

ポストテスト

試験的治療は、腰背部2箇所と、胸腹部2箇所のみです。肩関節に対する介入は一切行っていません。

一箇所あたりは30秒以内、全体の施術時間は合計で2分程度です。

(超音波での撮影なども行っていたのでプレポストの時間差は10分ほどあります。)

プレテストでは、見かけ上、右肩関節の屈曲制限により、手が短いように見えていますが、ポストテストでは見かけ上の手の短さは改善し、可動域についても左右差は分かりにくくなっています。

屈曲時の主観的な制限感にも、かなりの改善がみられていました。

少し急いでいたので股関節の可動域制限については撮影していませんが、股関節の屈曲制限の方も改善しています。

つまり、肩にも股関節にも触れずに、両方の関節可動域制限に改善がみられています。

この時点では、筋膜の高密度化がどこにあるのかは分かりませんが、筋膜の歪みの特徴については大体イメージする事ができていて、筋膜の歪みが生まれている原因が、「きっと身体のどこかに潜む筋膜の高密度化だろう。」と考えている段階です。

実際に行った、4箇所への試験的な治療は以下の部位です。

 

一旦、流れを整理します。

  1. 筋膜の歪みを評価する。
  2. 歪みの状態から筋膜の高密度化が起こっている部位の仮説が生まれる。【今はここ!】
  3. 筋膜リリースと筋膜マニピュレーションを併用し治療を行う。

四肢の可動域制限の出現の仕方により、私自身の経験上、「どの部位に問題がありそうか?」という事についてのパターンリーズニングが開始されるのですが、そのパターンリーズニングを用いずに筋膜の歪みを評価する場合は、改善がみられる筋膜リリースの方向を一つ一つ探していく事になります。

筋膜の歪みを試験的治療を用いながら評価していくと、筋膜リリースの反応の仕方に一定の法則性がある事に気づきます。もし、筋膜が関連していない場合は、この法則性が見つからない可能性もありますが、

関節に障害はないはずなのに、四肢の運動制限がみられている場合で、特別に優先すべき仮説が存在しなければ、「筋膜が関連しているはずだ!」と考えて、法則性を発見する事に注力して良いと考えています。

この法則性を観察していくと高密度化が起こっているであろう部位の仮説が生まれます。

 

1.筋膜の歪みを評価する。

歪みの評価法にコンセンサスが得られている方法があるわけではないですが、臨床的には姿勢や可動域制限の有無をもとに、歪みのあり・なしをみて行く事が多いかと思います。

私自身は、①四肢の運動制限の出現パターンと、②試験的治療による可動域制限の変化が、筋膜の歪みを評価する道具になると思っています。

筋膜の評価方法のポイントについては、Twitterの方でも紹介させて頂きました。

今回のケースでは、右肩関節と右股関節の主観的な動かしづらさ(最終域のつまり感)と、客観的にも確認できる屈曲制限と右股関節屈曲制限です。

制限の程度は最終域で若干の制限がある程度なので患者自身は気づいていなかったという場合も多いので、場合によっては検査者が最終域を意識するように促す声かけが必要な場合もあります。

腰だから肩関節の可動性は関係ないなんて決めつけず、腰痛や下肢痛を訴える患者さんこそ、肩関節の屈曲可動域や外転可動域の左右差をチェックしておく事をおすすめします。

症状とは直接関係なさそうなところに主観的な左右差があれば筋膜の歪みを評価する価値があり、その主観を評価の道具に使う事ができます。

 

最初の試験的治療の介入部位:右側背部

先ほどの右肩関節の屈曲制限と右の股関節の屈曲制限が出現しているケースの話に戻しますが、このような制限のパターンが起こっている場合は、まず同側の背部を下方へ筋膜リリースを加えるように、身体に対して水平方向への機械的刺激を加えると、可動域を制限しているバリアが解放されて可動域の改善が起こります。

実際に今回の場合も想定通りに可動域の改善がみられています(写真)。

なぜ、この方法を選択したかと言うと、これまでの私自身の臨床経験をもとにしたパターンリーズニングによるものです。パターンリーズニングを用いない場合は、まずは身体上のどこかを任意で選び、その部位を任意の水平方向Aへ行い、次にその逆方向Bも行って、どちらに動かした時の方が可動域の改善がみられるかを繰り返し見ていきます。

パターンリーズニングを用いない場合については、かなり簡易的ではありますがTwitterの方でも紹介させて頂きました。

まずは、評価の道具になる可動域制限をチェックします。

それから、任意の部位の筋膜を特定の方向に操作し、可動域制限の変化が生まれるかをチェックします。

不慣れな人は、難しい事を考えずに可動域が変わる場所が見つかるまで、探しまくる作業をしてみて下さい。

  1. 任意の部位に対して一方向へ物理的刺激を加え、可動域を評価します。
  2. 次に同部位を先ほどの方向と違う方向(逆方向)に刺激を加え、再び可動域を評価します。

二つの方向に、可動域制限への影響の差がなければ別の部位に対して同様の作業を行います。

方向が見つかれば、少し離れた位置でも同方向への刺激に同じような反応をするかをチェックしていきます。

今回の場合は、最初に選んだ方法で、すでに先に示したポストテストと同様の状態になっています。

 

バリアをとる方向が見つかれば、次の場所へ

本症例の場合、同側の下位胸椎レベルの位置で、上記で説明した変化が出たので、他の場所でも同じ方向への反応がみられるかを見ていきます。

腸骨稜レベルでも同じような、可動域制限のバリアがとれるような反応を示しました。

ここでは、同側背部に対して2箇所のみで確認を行っていますが、何度も確認する行為が許されるなら、中位腰椎レベル、腸骨稜レベル、仙骨レベル、大転子レベルでも、同じ方向(下方向)へのリリースで可動域の改善が維持されるかを確認していきます。

つまり、一つの組織を超えて、複数の組織を跨ぐ「ライン」のようなモノが存在しているかを見ていきます。

もし、筋膜が関わっていれば、一つの組織を超えて、複数の組織を跨ぐ「ライン」のようなモノが存在している事に気づくはずです。

学術から入りたい人は、筋連結のある解剖学書を読み漁ったり、アナトミートレインを熟読すると良いかもしれません。臨床派という人の場合は、難しい事は気にせず一つ一つの反応をみながら、「ここにラインのような、同じ刺激方向に反応する部位が存在するな」というのを見つけていくと良いと思います。

(私は、どちらかと言うと後者の方なので、アナトミートレインをそれぞほど意識して介入する事はありません。)

 

次は腹側へのアプローチ

上記で説明した流れを腹側側にも実施していきます。上記で想定しているラインが身体を一周して輪っかになるイメージをしてみて下さい。

背部は下方向へ、腹側は上方向へ、ラインを繋ぐイメージをしながら、その先の部位も動かしていきます。すると、どこかで方向が反転する場所が見つかる場合があります。

つまり、筋膜の歪みを戻す方向が、背側が下方なら、腹側は上方で反応するはず(これもパターンリーズニングの一部ですが、これを意識しない場合は、あらゆる部位に介入してみて、その結果をまとめるだけの話です。)という想定のもと、筋膜リリースを加えていくと、同じ方向への刺激では、可動域の制限が増大(悪化)する部位が出てきます。

今回のケースでは、それが、胸部前面(胸骨レベル)に見つかりました。(下図の赤矢印)

ちなみに、もし方向が反転したところを見つけきれない場合は、他の部位に広げて筋膜の歪みを評価していく必要があると考えています。

今回の症例では、すぐに方向が反転するところが見つかったので、そこから筋膜の高密度化が起こっている部位への推論に話を進めていきます。

 

2.歪みの状態から筋膜の高密度化が起こっている部位の仮説が生まれる。

筋膜の高密度化が生まれて、それにより筋膜の歪みが出現していると考えた場合、以下の状態をイメージする事ができます。(既に本文中で説明させて頂いています。)

離れた部位B高密度化A離れた部位C

 

  • 高密度化Aに対しては、マニピュレーション
  • 離れた部位Bには、左方向(←)への筋膜リリース
  • 離れた部位Cには、右方向(→)への筋膜リリース

これを照らし合わせると、高密度化した部位から離れた部位Bにあたるのが下位胸椎部で、離れた部位Cにあたるのが胸骨前面です。

「この間に位置しているどこかに筋膜の高密度化が起こっているであろう」と歪みの状態から筋膜の高密度化が起こっている部位の仮説が生まれます。

少しずつ、両端から中央部分によっていくように歪みを評価していくと、特に方向性が見つからない(分かりにくい)部位が出てくるので、そこが筋膜の高密度化が起こっているであろう部位と考える事ができます。

そこで指圧刺激を加えた時などに痛みが誘発されれば、そこが全身の筋膜に歪みを起こす原因となっていた高密度化した部位と考える事ができます。

 

3.筋膜リリースと筋膜マニピュレーションを併用し治療を行う。

筋膜の異常(癒着、凝り、高密度化)を正常な状態に戻そうと考えた場合、筋膜リリースと筋膜マニピュレーションを併用します。

筋膜マニピュレーションは、筋膜の高密度化が起こっている部位をピンポイントで狙う必要があるので、その部位がどこなのかを探す事が重要です。押すと痛がるからというだけで施術するとなかなか上手くいきませんが、歪みの評価から進めていく事で、筋膜の高密度化が起こっている部位にたどり着きやすくなります。

その部位に対しては、垂直方向への圧を加えながら摩擦熱を加えるような刺激(筋膜マニピュレーション)を行い、そこから離れた部位には歪みを戻す(伸ばす)方向へ伸長(筋膜リリース)してあげると、筋膜を異常な状態から正常な状態に戻す事ができると考えています。

イメージは、小さな紙がクシャクシャになった状態でキープされてしまっているイメージです。

ヒアルロン酸の状態を改善させるために、垂直方向に圧刺激と振動刺激を加え、筋膜が再びスムーズに滑走できるような状態を作り出し、両端を水平方向への持続的な伸長によってクシャクシャの状態からまっすぐに状態に戻そうというように徒手にて働きかけます。

垂直方向への圧刺激と振動刺激を加える理由には、ヒアルロン酸が関与しています。

物理療法としては、高密度化部位に超音波治療器を用いる事も良いかもしれませんが、私自身は基本的に徒手的な介入が多いのでこの方法です。

 

ここで解説してきた事は、「正しい筋膜の治療法はコレだ!」なんて事を言うためではありません。私自身が実際に行っている方法を紹介した上で、それらがどういった理屈で実践されているのかを私の能力の範囲で解説させて頂きました。

筋膜マニピュレーションや筋膜リリースについても、方法論については正式なセミナーを通して学ぶ事をおすすめします。

便宜的に、筋膜リリースや筋膜マニピュレーションという言葉を多用していますが、私が使う場合は、以下のような物理的(機械的)刺激の種類というようにご理解頂けると幸いです。

名称 強度 特徴
筋膜リリース 弱い 水平方向への伸長
筋膜マニピュレーション 軽い痛みを感じる程度  圧刺激・振動

 

テクニックに走った目先の症状改善よりも、それまで・これからのリーズニングプロセスが重要となります。

つまり、実際の症状が改善しているのか、設定したアウトカムに到達しているかをしっかりと評価し、トライアンドエラーが実践できているか、その人に合った方法を見つけホームエクササイズに落とし込めているか、などの方が重要であり、臨床では目先のテクニックはそれほどセラピスト自身を助けてはくれません。

リーズニングプロセスについては、ここで詳しく説明する事は難しいので興味のある方は勉強部屋の方で公開しているクリニカルリーズニングシリーズをご一読頂けたらと思います。

 

鋭い方はお気づきだと思いますが、具体的な方法として紹介した項目1と項目2については、具体的な説明をしていますが、3については高密度化された部位の推測と、アプローチする際の考え方を整理しただけです。具体的な事は何も言っていません。

そこについては、治療経過(症例報告)として、別記事でシンプルにまとめたいな(あまりに長くなってしまったので、、、)と考えています。

 

最後に、、、。

これまでは、「現象として起こっている結果」を無視しない事を優先し、下手に理論武装に走る事は避けてきました。しかし、自分なりの臨床論が確立されつつあるので、今後の課題は自分の感じてきた事と、最新の知見をつなぎ合わせる事だと思っています。

「筋膜マニピュレーション」という言葉を使ってはいますが、これについては、自分なりに勉強しているだけであり、正式な技術系のセミナーに行って習得したわけではありません。もともと、特定の学派に属する事は自分の臨床への向き合い方とは一致しなかったので、ある事をきっかけに所属していた徒手療法系の団体からは退きました。

でも、これからは、良さそうだなと思える学術団体の中には積極的に飛び込んでみて、理論的なところも学んでいこうと思いはじめています。

特に、ここで解説した筋膜の高密度化が起こっている部位の探し方については、筋膜マニピュレーションの正式なセミナーで学ばれてきた方と話をすると、評価のプロセスや方法論が異なっているはずなので、今まで手探り状態で取り組んできた事と学術がどこかで結びつくのか、それとも、全く異なるものを勝手に高密度化と考えているのか、を知りたくて興味が湧いてきています。

もう一つは、最近流行りの運動器エコーを用いた超音波による評価です。

ここで説明したような筋膜に対して行ったアプローチが、どのような身体内部の変化を引き起こしているかを自身の目で確認したいと思うようになりました。幸い、超音波を用いた評価を学べそうな環境にいるので、積極的に取り組んでみたいな思います。

今回のケースについても超音波による評価を行なっていますが、ここで紹介できるレベルには達していないので、もっと評価技術を高め、その検査データを整理できれば紹介したいなと思っています。

私は、2017年3月末で一旦医療の現場を離れて、フリーランスの理学療法士として活動してきました。2018年4月からは、「整体」という形で起業し、病気の人に対する医療ではなく、予防や健康増進という観点で、これまでの経験を生かせるような活動を進めていく予定です。

2017年に取り組ませて頂いたセミナー関連の活動は、大きな規模ではなく、超少人数制の小勉強会の形でひっそりと継続できたら良いなと考えています。実際に何らかの症状を抱えている人を前にして、複数のPTでディスカッションしながら学び合いができる会が理想です。

以前、コースセミナーに参加して頂いた方々には、起こりやすい四肢の制限パターンのいくつかを紹介しましたが、今回の症例は、その時の「肩・股関節の同側性の制限パターン」に該当します。

もし小勉強会をする事となれば、私自身のパターンリーズニングの紹介や、当記事のような評価から治療までの流れを丁寧に伝えられたらなと思っています。(全くの未定ですが、興味のある理学療法士がいましたら当ホームページか、たなはらの勉強部屋にご連絡下さい。開催が決定となった際には案内をお送りします。)

当記事「筋膜の異常(癒着、凝り、高密度化)を正常な状態に戻す」が、痛み治療の臨床で悩むセラピストや、筋膜について学ぼうと考えている人の参考になる記事になれば幸いです。もちろん、ここで説明させてもらった事が全てではありません。「間違っているのでは?」と思う箇所があればご指摘下さい。

 

理学療法士や、セラピスト向けのお知らせ ♪

理学療法士(※現職者・PT3年目以上)小規模勉強会の募集のお知らせ

腰痛患者に対するパターンリーズニングと筋膜への介入
少人数制勉強会、平日(水曜or木曜)

セラピスト(専門家)向けの記事一覧はこちらでご確認頂けます。

 

痛みは死よりも恐ろしい

身体の痛みは、本人にしか分かりません。
もし、医師から「特に異常はありません。」と言われれば、家族や周囲の人々に、この苦しみを理解はしてもらう事は難しく、この苦しみと独りで戦い続けなければなりません。

もし症状が長引けば、徐々に「痛み」に生活が支配されはじめ、少し良くなったとしても今度は「再発」という不安が襲ってきます。

痛みによって何かを諦めたり、過度に外出を恐るようになったり、
中には、慢性的な痛みによって生きる事を諦めてしまった方もいます。
「痛みは死より恐ろしい。」という言葉は、痛みによる苦しみを妙実に表しています。

腰痛専門サロンたなはらは、痛みによる苦しみを抱える方々の力になりたいと考えています。

当サロンは、どのような身体の不調でも治す事ができる施設ではなく、医療機関でもありません。
しかし、痛み治療に長年携わってきた理学療法士として、今も苦しんでいる方々の人生が変わるきっかけとなれるよう、全力で施術にあたらせて頂いています。

当サロンの紹介と代表あいさつ

療法士向けの記事下

 

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内容:初回限定の体験・お試しコースです。
期間:1回(初回限定)
金額:2,000円 ※無料キャンペーンあり

2

内容:慢性的な腰痛を自己管理出来るようになるためのコースです。
期間:1ヶ月 or 2ヶ月
金額:32,000円/月(1回あたり8,000円)

3

内容:腰・骨盤周囲の症状に対する単発のケア・メンテナンスを実施します。
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