- インピンジメントとは、診断名ではなく臨床症状である。
- インピンジメントの病態生理は、まだ完全には分かっていない。現時点では、ローテーターカフの腱が肩峰下腔を通過するさいに衝突することが原因だと考えられている。
- インピンジメントによる機械的刺激が、腱の腫脹と損傷を引き起こす。ローテーターカフの腱や肩峰下腔に変化が起きる理由は現時点で不明である。
- インピンジメント徴候や症状には、少なくとも9種類の特異的診断が関連し、種類は以下のように分類されている。
- 外側
一次性
二次性 - 内側
一次的外側インピンジメント
肩峰下腔の上部構造に異常が生じると、上方から侵害される場合が。肩峰の下面にくちばし型(beaked)、屈曲型(curved)、かぎ型(hooked)、などの変形が生じる。
これらの異常は、先天異常(肩峰骨)や骨棘形成が原因である。高齢者に生じやすい異常としては、鳥口肩峰弓の肥厚や肩鎖関節下面への骨棘形成などがある。
二次的外側インピンジメント
若年アスリートの場合、肩甲骨の安定性が不完全なため、肩峰が過剰に傾斜して肩峰下腔を侵害することがある。前鋸筋など肩甲骨の内側縁に付着した筋の筋力が相対的に弱くなり、肩甲上腕関節の動作に伴う肩甲骨の前方突出や回旋をコントロールできなくなる。
その結果、肩峰が前下方へ移動すると、肩峰下腔が侵害される。これは、肩甲骨を前方突出する小胸筋の過度の緊張によって悪化する。
また、ローテーターカフの腱は、多量の負荷が加わると弱化しやすい傾向がある(水泳や東急動作における抵抗など)。
上腕骨頭挙上筋(三角筋)と上腕骨頭安定筋群(ローテーターカフ)がアンバランスだと、上腕骨頭の挙上が過剰になる。
その結果、三角筋の収縮に伴い上腕骨頭が上方偏位し、ローテーターカフの腱が通過するスペースが狭くなる。この上腕骨頭が移動する力によってローテーターカフの下面に上腕骨頭が衝突し、さらなる損傷が発生する。
内側インピンジメント
内側インピンジメント、または関節窩インピンジメントは、投球動作のレイトコッキング期に(伸展、外転、外旋位)、ローテーターカフの下面が関節窩の後上面に衝突することで発生する。
これは通常の生理的な現象であるが、オーバーヘッド動作を行うアスリートの場合は、反復性外傷が原因で病変が生じ、上方関節唇が損傷する。
引用文献
- Peter Brukener & Karim Khan : 臨床スポーツ医学 医学映像教育センター