心理学

アッシュによる「同調行動」

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私たちは、多数者の意見が自分の意見とは少し異なったとしても、それほど重大な事でないと判断すれば、その場の多数意見に同調して、その場を丸く収めようとする傾向があるかと思います。

しかし、周りの大多数の意見が明らかに異なる時、自分の意見が絶対に正しいと思えていても、しっかりと自分の意見を言えるでしょうか?

 


アッシュによる同調行動の実験

多数者への同調について実験を行ったのがアッシュという心理学者です。

アッシュは、正解が明らかな線分の判断課題を数人が順番に答えていく状況での同調行動についての実験を行いました。

課題は、下のような図を見せられて、基準となる線分(標準刺激と言います)と、選択肢に挙げられた3つの線分(比較刺激と言います)を比べ、標準刺激と同じ比較刺激を選択するようになっています。

心理学実験アッシュ

1回の実験に参加する被験者は1人で、残りの回答者は全てサクラとなっています。時々、わざとサクラ全員が一致して間違った答え(誤答)を言うように仕組まれています。

サクラが誤答を次々と繰り返した時に、被験者はどう答えるかを調べようとしています。

ユーチューブに実験動画がありましたので載せさせて頂きます。英語版ですので、少し見にくいかと思い、私なりの解説も入れさせて頂きます。

被験者は4人で、1人ずつ実験中の様子が流れます。(4分程の動画です。)

1人目は、白いシャツの方です。最初はサクラも正答しますが、途中からサクラ全員が誤答を繰り返します。

2人目は、サクラ全員が最初から誤答します。被験者が正答すると、周りから変な目でみられるというプレッシャーが与えられます。

3人目は、赤いセーター(?)を着ている髭もじゃの方です。ここではサクラの中の1人だけが正答し、残りが誤答するという設定です。

4人目は、白いシャツ(デルマトームC4領域が黒のシャツ)の方で、返答を口答ではなく、記述によって行っています。


-1人目-

5番に座っている方(白シャツ)が被験者です。

実験者から実験の流れの説明を受けた後に、実験開始です。

一問目は、正解が2番で、被験者とサクラの4人の全員が、2と答えています。

二問目は、正解が3番で、これも全員が正解の3と答えています。

三問目(動画1分頃)は、正解が1番です。しかし、サクラの4人は2と答えています。
被験者は、少し戸惑いながら2と答えてしまいます。

四問目は、正解は2番ですが、サクラが1と答えるので、周りを見渡して戸惑っている様子を見せながら1と答えてしまいます。


-2人目の被験者(動画1分40秒頃)-

一問目から、サクラは1と誤答しますが、この被験者は勇気を持って、自分が正解だと思っている2を答えます。

すると、サクラ全員が、正解を言った被験者を見つめて、変な圧力を加えています。これも実験計画の中に含まれている手順です。

この後、被験者は周りからのプレッシャーに打ち勝てるでしょうか?

二問目は、正解が3なのですが、被験者は2と答えてしまいます。プレッシャーに打ち勝てませんでした。

三問目も同様にプレッシャーに打ち勝てず2と答えてしまいます。その際、少し首を横に振りながら、本当に答えたい事と違う答えを言っている雰囲気を出しています。


-3人目の被験者(動画2分30秒頃)-

三人目の実験は、少し設定が変わっています。サクラの中の一人が、本当の正解を答えます(残りは間違いを答えます。)

一問目です。正解は2です。サクラの中の1人だけが、正解である2を答えます。すると、被験者は、躊躇する事なく、正解だと確信している2と答えます。

返答後は、同じ答えを言ったサクラとアイコンタクトをとって、「俺達が正しいよな!」という雰囲気を醸し出し、最後に少し会釈をしています。

動画の編集者は、この「どや顔」を何度もリピート再生しながら、「賛同者がいれば、自信を持って、自分が正しいと思っている事を言える」と解説しています。


-4人目の被験者(動画3分10秒頃)-

この方の実験内容は、かなり省略されているのですが、口答でない場合は、サクラにつられる事無く、正答を記述する様子が映されています。


以上が、動画の解説です。

動画と合わせて読んで頂けると少し見やすくなるかと思います。

実験結果

平均30%の試行で多数者への同調行動がみられ、被験者の70%以上で少なくとも一度は同調行動が見られました。

このように、明らかに自分が正しいと思える事でも、集団の圧力に屈してしまい同調行動をとってしまいます。

その後の研究で、3,4人のグループで行った時が最も同調行動がみられやすく、1人でも自分と同じ意見の他者がいると同調行動は激減するようです。さらに、不思議な事に正解が明らかな課題な程、同調行動への力が強い事が確かめられているようです。

最後に

私たち理学療法士も、症例報告会やカンファレンスなどで、自分が正しいと思っている事を言えずに他と同調してしまう事があるかと思います。

動画の2番目の方のように、最初は威勢が良くても、その行動を変な目で見られてしまうと、そのプレッシャーに屈してしまう方が多いかもしれません。

同調行動についてのアッシュによる古典的な心理学実験の紹介でした。

 

 

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