治療手技の紹介&解説

3.非特異的腰痛の評価|肩関節外転と股関節内転・内旋の運動検査

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クリニカルリーズニングシリーズ10

前回の記事と同様に、股関節と肩関節の運動制限をチェックするのですが、今回は対側性に出現する運動制限パターンとその対応方法を解説していきます。

前回記事では同側性の制限で、今回の記事は対側性の制限ですが、この二つの運動制限パターンは関連しているので合わせて読んで頂けたらと思います。

 

腰痛患者の四肢の運動制限パターン「肩関節外転と股関節内転・内旋」

患者像

左右差のある腰痛を訴える患者で、殿部痛や大腿部痛、下肢痛はあってもなくても構わない。腰痛に加えて、肩のひっかかり感を訴えたり、以前に肩の自動運動に何らかの症状があったと話す患者。「生活に支障をきたす明らかな制限」というよりも、「高く挙げた時に少しだけ引っかかる感じがする。」と話す患者が多い。明らかな肩可動域の制限があっても良いが、高度の変形や肩関節構成体の損傷もしくは強い炎症ではないこと。

日常生活上の活動や仕事で、座位姿勢が多い(座位姿勢で症状増悪)患者と、立位姿勢・歩行が多い(立位姿勢で症状増悪)患者で運動検査の反応が異なる。前者(1)の場合は前回記事で解説した運動検査と所見が一致する。

  1. 座位姿勢の持続やデスクワークの時間が長い人の場合は、症状同側の肩関節外転と対側の股関節内転・内旋制限のパターンが多い。(症状側の肩屈曲制限、肩外転制限、股関節屈曲制限がみられ、反対側の股関節内転・内旋制限)
  2. 立位姿勢の持続や歩行する時間が長い人の場合は、症状反対側の肩関節外転と同側の股関節内転・内旋制限のパターンが多い。

ここで示した運動制限のパターンの1、2については、絶対ではありませんが、問診や症状増悪因子と運動検査を照らし合わせるとその傾向が見られる事は非常に多いと感じています。赤枠内で示した患者像に当てはまる人に以下の運動検査を行ってみて、ここで解説しているような陽性所見・運動制限パターンがあるかをチェックしてみて下さい。
 

検査所見(運動検査)

  1. 座位で両肩関節の外転の自動運動を比較
  2. 背臥位膝立て位で、股関節の内転・内旋の自動運動を比較
    (※明らかな関節変形がある場合を除く)

対側性に制限や制限感が出現していないかを確認していきます。

※機能的な運動検査の所見は、評価の過程で、患者としっかりとコミュニケーションをとりながら軽微な左右差を確認していきます。患者の主観的な反応を解釈する努力を療法士ができているかが臨床結果を大きく左右します。この点について当記事では触れませんが、過去のクリニカルリーズニングシリーズで解説済みとして話を進めます。

座位姿勢 肩外転

座位姿勢をとり、片側ずつ肩関節外転の自動運動を評価します。

主観的な挙げづらさや、抵抗感(つまり感・つっぱり感)、努力感に左右差がないかを確認します。

軽度の制限とは反対側に主観的な抵抗感がある場合などは、可動域の微妙な左右差よりも主観的な抵抗感や努力感を優先させます。

※写真では右側で制限があり、主観的にも最終域付近での努力感を訴えたため陽性所見(+)と判断できる。右側陽性所見(+)

 

背臥位膝立て位 股関節内転+内旋

両膝立て位から、足部を肩幅程度に開いた肢位をとるように指示する。そこから片側の股関節を内転・内旋させるように指示を加える。

反対側の下肢が邪魔になる場合は、軽度股関節を外転位にするように指示する。可動域や抵抗感の左右差の有無を確認する。

※写真では、左側の内転・内旋で陽性所見(+)

関節の構造的な問題であれば著名な左右差が起こりうりますが、ここで確認したい事は機能的な制限パターンです。多くの場合で、患者自身が「微妙な左右差の存在をチェックしよう」という意思がなければ見逃されてしまいます。

陰性であるなら、「確実に陰性であるという事が言えるか」を注意しながら、片側の肩外転制限(座位)と反対側の股関節内転・内旋制限(背臥位膝立て位)が存在しないかをチェックしてみて下さい。

座位姿勢からの肩関節外転運動で制限もしくは、何らかの主観的な左右差があり、対側の股関節内転・内旋(背臥位膝立て位)に制限もしくは、何らかの主観的な左右差がある場合、ここでチェックしたい徴候が陽性であると判断します。

運動検査時の軽度の左右差をチェックするには、患者自身の取り組みが非常に重要で、この違いを把握する事が苦手な患者もいます。座位肩外転運動に左右差があるが、股関節の可動性には左右差がない(もしくは抽出できない)場合は、座位での肩外転運動に試験的治療を試みて変化が出現するかをチェックして下さい。ここで、変化が出る患者は、多くの場合でこの対側性のパターンが出現していると感じています。

上記所見陽性患者に対する治療手技

側臥位:頭尾側方向の治療

方法

腰椎部の圧痛点、坐骨部の圧痛点(TP)を探す。腰椎部の場合は最も前弯がみられる部位か、キンキングが見られる部位にTPがある事が多い。圧痛点が見つかれば、上方へリリースをかけるように筋膜層を可動させる。

適応

同側の自動運動検査で股関節内転・内旋陽性所見(+)、ASLR2陽性所見(+)

反対側の自動運動検査で肩屈曲陽性所見(+)、股関節屈曲陽性所見(+)

効果判定

上記検査項目の陰生化と疼痛動作の改善

 

背臥位:頭尾側方向の治療

方法

治療3と同様の部位を触診し圧痛点(TP)を確認する。腹部(腹直筋外側縁〜腸腰筋を触診可能部位)、腸骨稜部、大腿近位外側部の圧痛点(TP)を探す。圧痛点が見つかれば、下方へリリースをかけるように筋膜層を可動させる。

適応

同側の自動運動検査で股関節内転・内旋陽性所見(+)、ASLR2陽性所見(+)

反対側の自動運動検査で肩屈曲陽性所見(+)、股関節屈曲陽性所見(+)

効果判定

上記検査項目の陰生化と疼痛動作の改善

 

記載している内容について

ここで解説している内容は、サイト運営者である私自身が実際に臨床を通して治療効果を得られた治療手技の一部をブログ用に記事にしています。

記事内のテキストと、写真(グレー枠内)に解説を加えているテキストに多少の違いがありますが、これはセミナー用の資料として制作したものを転載しているためです。ここで説明していない用語(検査所見)については、特に気にせずに読んで頂けたらと思います。

ここで解説している事は単純な方法論のみの解説のように見えますが、あくまでも当サイトのコンテンツの一部にすぎません。メインコンテンツである「クリニカルリーズニングシリーズ」の他記事と合わせて読んで頂けたら、どのように臨床に取り組んでいるのかを多少なりとイメージできると思います。

 

「3.非特異的腰痛の評価」まとめ

腰痛患者に対する機能的な評価として、「四肢の運動評価が、治療手技選択のヒントになる事もある」という事を伝えたく一例を示しました。肩関節の外転制限や外転時の引っかかり感がある患者の股関節内転・内旋の可動性をチェックしてみて下さい。

対側性の四肢の可動域制限(もしくは主観的な制限感)があれば、当記事で紹介した検査の陽性患者です。

そして、肩外転の反対側の腰椎部に圧痛点があれば、その圧痛点を上方にリリースを加えるように治療刺激を入れてみて下さい。

肩関節の外転制限(外転時のひっかかり感)の改善とともに疼痛動作の改善が認められれば、そこが治療介入ポイントになるかと思います。もちろん、前回記事同様「腰痛患者全例で使える魔術のような治療テクニック」ではない事をご理解頂けたらと思います。

次の記事→4.非特異的腰痛の評価|骨盤の左右回旋の運動検査

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