腰下肢痛を訴える患者に対して行った筋膜リリースの解説

【2016.7.26追記・修正】
実際の治療部位と治療方向を載せた写真に間違いがありました。後に使おうと制作した逆方向への治療の写真(白矢印)を使用していました。現在は修正澄み(赤矢印)です。また、文中の記述で一箇所修正しています。訂正前を「後方組織は下方へ、前方組織は上方へ」と、打ち消し線で示しています。その他は、初回投稿時の記載の通りです。大変申し訳ありませんでした。

筋膜リリースについて

筋膜リリースは、従来からオステオパシー領域でも行われており、またjohn F.Barnesらによって体系づけられた比較的新しい治療理論も存在します。また、筋膜マニピュレーションやロルフィング(それを扱うセラピストをロルファーと呼ぶ)など関連する用語や治療技術・理論があります。

今回の症例報告で扱う筋膜リリースは、特定の治療学派や理論を背景にした筋膜リリースではなく、療法士が皮膚上にコンタクト(用手接触)し、軽度の圧を加えながら、皮膚とその下層の組織に伸張刺激を与える手技を筋膜リリースとしています。

刺激を加えている部位は、筋膜層を仮定していますが、刺激が加わっている部位をそこだけと限定する事は不可能です。また、生体内に変化を与えるメカニズムについては、多くの書籍で、生理学の基礎知識として解説が加えられていますのでここでは触れていません。そちらを参照して頂ければと思います。

※ こちらの記事は、症例報告④「腰椎椎間板ヘルニア患者に対する筋膜リリースを用いた治療の正当性を考える」の実際の手技に関する補足記事です。

 

行った方法(写真1~4)です。

側臥位

筋膜リリース閉脚制限1

筋膜リリース閉脚制限2

筋膜リリース閉脚制限3

背臥位(治療の前半では用いていません。)

筋膜リリース閉脚制限4

最初の選択は、最も安楽な肢位である側臥位で治療を実施。

衣服の上から手掌を用いてコンタクトし、皮膚上を滑らない程度に圧を加えた状態から、皮膚を引っ張る用に、写真に示した矢印の方向へスライドさせるようにリリースを加えています。大転子から腸骨稜までを中心として、後方組織は下方へ、前方組織は上方へ前方組織は下方へ、後方組織は上方(赤矢印)行っています。

【2016.7.26追記・修正】
※ 最初に掲載した写真は、後の説明で使おうと思っていた逆方向(白矢印)への治療を説明する写真でした。治療として導入した治療手技の写真は赤矢印で示された方向への治療刺激を加えています。

腰椎椎間板ヘルニアと確定できる所見はみられないが、それでも診断の過程で腰椎椎間板ヘルニアと診断されてリハビリテーションの処方が出ている患者の多くで、筋膜リリースによる介入が功を奏する事を経験しています。

発症起点が、過度な荷重がかかる事によるものと思われる場合で、それに加えて、背臥位片膝立て位での股関節内転内旋運動が、外転外旋運動よりも困難(主観的な抵抗感や可動域の制限、可動範囲の狭さ)である場合は、上記の治療手技を選択する場合が多いです。

今回の症例は、重い荷物を持ち上げたり、移動させるという作業を繰り返した事から腰痛症状が発生したと考えられるために選択しました。

また、背臥位姿勢での股関節内転内旋運動で疼痛の増悪がみられたため、上記のパターンリーズニングを選択する理由にもなりましたが、背臥位姿勢を続ける事による痛みが開始肢位の時点であった為、判断のための重要な材料とはしませんでした。

両側性に腰下肢痛を訴えるが、右側臥位をとっていた為、最初に左側への上記の治療を行いました(上記4枚の写真)。治療グレードは、抵抗域・疼痛(増悪)域へは及ばない範囲(メイトランドで言うところのGⅠ~Ⅱ)から開始。治療経過の中の中盤以降から抵抗域へ及ぶ範囲での治療強度を用いました。

左側のみに治療を加える事で、ポストテストの際に右側との比較をしやすく、変化を患者自身が自覚しやすくなる為、試験的治療は右側臥位での左腰殿部のみに実施しました。改善している事を確認してから、右側へも同様の手技を加えています。

 

※ 自動運動検査(①開始肢位、②股関節内転内旋運動、③股関節外転外旋運動)

自動運動テスト 股関節内転・外転検査① 自動運動テスト 股関節内転・外転検査② 自動運動テスト 股関節内転・外転検査③

 

その他にも以下の症状を訴える患者で有効性が高い事を経験しています。

  • 片側性であれば疼痛側でSLRT陽性
  • 痺れの有無は関係なく、膝遠位の症状より腰殿部痛症状が強い。
  • 歩き始めよりも、歩き続けていると痛みが増してくる。
  • 歩行の継続や立位保持で辛くなり、座って休むと楽になる。
  • 持続的に背臥位をとる事がつらい。
  • 歩行や立位保持で、腰を伸ばし続けるのが辛くなる。
  • 症状が重度でなければ、車の運転はあまり苦にしない。

 

筋膜リリースについて解説している書籍「ファッシャルリリーステクニック」では、リリースの方向を立位アライメントを評価した上で、骨盤の位置(前方・後方)や、前後傾で決定するとありますが、私自身の経験上では、立位アライメントよりも自動運動の「運動のしづらさ(患者主観)」や「可動域制限」で決定する方が、患者間でも一貫性があるように感じています。

その際の自動運動による評価の1つが、上記で挙げた「股関節内転内旋運動」と「股関節外転外旋運動」の比較です。①同運動の左右差を比較する事と、②片側での内転運動と外転運動を比較して、もっとも制限がある(制限を感じる)方向を決定し、

  • 股関節内転内旋運動の制限であれば、上記で示した方向(赤矢印)への筋膜リリースを、
  • 股関節外転外旋運動の制限であれば、反対方向(白矢印)への筋膜リリースを実施する事で、

自動運動の改善と、症状の改善を経験してきました。また、片側の腰下肢痛を訴える場合は、自動運動の制限が対側性(疼痛側で「内転制限、非疼痛側で外転制限」もしくは、その逆のパターン)に出ている場合も多く、その場合は、非疼痛側に対する筋膜リリースで疼痛側の自動運動の改善と症状の改善がみられる場合も多くあります。

上記で示した事は、手技そのものの評価に拘って、「特定の手技が何に変化を与えるか」についてをみてきた経験上の話しで、しっかりと統計的分析をとっているものでもありませんが、私自身では、上記の判断基準を採用した上でリリース方向を決定すれば治療効果が確かにみられる手技と考えています。

 


こちらの記事は、症例報告④「腰椎椎間板ヘルニア患者に対する筋膜リリースを用いた治療の正当性を考える」の実際の手技に関する補足記事です。

手技そのものの解説については、症例報告のメインテーマとしたものから外れてしまう為、別ページを設けました。このページ内容に関する質問も、症例報告記事の方で受け付けています。

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