関節可動域検査(ROM-T)のアセスメント、測定方法、制限因子

関節可動域検査とは?

理学療法学生が習う検査の中で、1番最初習う検査項目で、関節の可動域を確認・計測するための検査です。

一般的には、ゴニオメーターと呼ばれる、角度計を用いて関節の可動角度を計測していきます。

主に日本整形外科学会による関節可動域測定法が、用いられますが、それだけが関節可動域検査ではありません。

例えば、用いる道具が、ゴニオメーターに限らずインクリノメーターと呼ばれる、脊椎の可動域角度を計測する方法もありますし、立位体前屈などで指床間距離をメジャーや物差しを用いて図るものも関節可動域検査の一部となります。

検査肢位については、一般的な共通理解とされているものがありますが(これも日本整形外科学会によるもの)、必ずしもそれに従わなければならないわけではありません。

ただし、共通理解とされているものと異なる方法を用いた場合は、それを明記しておく必要があります。

例えば、膝の屈曲可動域を測定しようとした時に、背臥位で股関節を屈曲させながら、同時に膝他動で曲げて、その角度を測定する方法がありますが、膝の屈曲の可動域検査はこれだけではありません。

しゃがみ込み姿勢、膝が曲がらないという患者であれば、実際にしゃがみ込みをやってみて、その角度を計測する事もできます。

この場合、しゃがみ込み時の膝の屈曲角度が80°だとします。

この角度は、参考可動域と呼ばれる正常値とされているものよりもかなりの制限が存在する屈曲角度です。

これが、「拘縮によるものなのか?」という疑問が出てくると思うのですが、これを確認したいのであれば、患者を背臥位に寝かせて、先ほど挙げた日本整形外科学会による手法を用いて測定した膝関節の屈曲角度と比較してみれば良いのです。

  • 日本整形外科学会による手法:屈曲120°
  • しゃがみ込み時の膝屈曲角度:80°

この場合は、膝関節に拘縮が存在するのではなく、持っている関節可動域を存分に使いきる事ができていない状態と言えます。

これが、膝関節に制限があるように見せている機能障害と言えます。

もしかしたら、股関節に制限があってしゃがみ込みができない結果、見た目上の膝関節屈曲制限(不足)が起こっているものと思われます。

膝関節は前額面上に軸があり、矢状面上を大腿骨と脛骨が動く関節です。その関節に制限が出ているので、矢状面上を骨が動く軸を持っている他の関節に関連がありそうです。

  • 股関節で言うと、屈曲-伸展
  • 足関節で言うと、背屈-底屈

しゃがみ込みに関して言うと、股屈曲か、足背屈に制限があれば、しゃがみ込み時の膝の曲がりを悪くしているのは、それらの関節可動域制限であると言えます。


関節可動域検査のアセスメント

関節可動域検査を行った結果のアセスメントについて説明します。

よく理学療法学生から、「アセスメントは何を書けば良いのですか?」と質問を受けますが、「統合と解釈」とアセスメントを間違えて解釈してしまっている学生はとても多いです。

アセスメントは、その検査で言えるものに限定して、その検査の結果の中で、学生自身が何かしら意味のある数値と判断したものを報告する場です。(レポート上であろうと、対話的にアセスメント報告する場合でも同様です。)

アセスメントは先ほど挙げた、しゃがみ込み時の膝の曲がりが悪い理由が

  • 「股関節の制限からでは?」
  • 「足関節の制限からでは?」

というような、関節可動域検査の結果から言えるものだけに着目して、その結果に価値付けを行ったものです。

間違えてしまっている例としては、

「膝関節の屈曲角度がしゃがみ込み時に浅い理由として、身体重心が後方移動しているため、これ以上曲げようとすると、重心が支持基底面から外れしまうため、屈曲角度浅く保っているものと思われる。」

というような、仮説が含まれているものです。

これは、関節可動域検査で言える範疇を超えてしまっています。

これを行うのは、統合と解釈です。

姿勢観察の結果と統合して、「後方重心が影響している…」と言えるのであって、関節可動域検査のアセスメントでは、これらについて触れるのは不可能なはずです。

シンプルに、関節可動域検査で言える事だけでの話をする必要があります。

では、関節可動域検査では、どこまでの事言えるのでしょうか?

関節可動域検査は、一般にその角度の数値を出す事だけが、それだと思われますがちですが、決してそうではありません。

養成校の授業で、制限因子という言葉が出てきたはずですが、覚えているでしょうか?

関節可動域検査として、

  • 関節の可動範囲を書く検査:屈曲140°、伸展-5°など
  • その角度の最終域感(エンドフィールド):骨性、軟部組織性など

その他、ムーブメントダイアグラムを使用した、関節の可動性について詳細に記載する方法も存在します。

  • 関節角度の中で、制限が出だす所:ファーストストップ

などです。

これらの関節可動域検査でできる範囲内で記載されたものが、関節可動域検査のアセスメントとなります。

例を示しておきます。


関節可動域検査(ROM−T)

  • しゃがみ込み時の膝屈曲角度:80°
  • 他動による膝屈曲関節可動域検査(日整会):130°
    最終域感(エンドフィール):軟部組織性

(その他の関節可動域検査)

  • 立位体前屈時の指床間距離(FFD):0㎝
  • 股関節屈曲:120°
  • 足関節背屈:-10°(底屈位)
  • 最終域感:急な停止、(疼痛を訴えあり)

アセスメント

しゃがみ込みによる膝の屈曲角度は、80°と一見制限があるかのように見えるが、他動運動による関節可動域を測定してみると、130°と十分な可動性が保たれていた。また最終域感も異常と言えるものはなく、疼痛が出現する事もなかった。

しゃがみ時の矢状面上で関連する他関節の可動域を見てみると、立位体前屈(FFD)では0㎝と十分な脊椎・股関節の可動性も保たれている。また、関節可動域検査でも股関節に制限は認められない。

しかし、足関節の背屈をみてみると、-5°で、背屈制限が存在した。また、最終域では疼痛を訴え急な停止となった。

よって、しゃがみ込み時に膝関節の屈曲がみられないのは、足関節の可動域が影響しているものと思われる。同時に疼痛も訴えている事から、疼痛が制限因子となっている可能性があるため、詳細な疼痛検査が必要と思われる。

これが、関節可動域検査で行うアセスメントとなります。


関節可動域検査では、計測不可能な重心の位置などに触れる必要は一切ありません。返って混乱を呼びますので、アセスメントを書く際は、どこまで書けるのかをよく考えて下さい。

制限因子について、詳細に書かれているのは、この本ですね。関節拘縮の専門とも言える長崎大学教授の沖田実先生の書籍です。

関節可動域制限―病態の理解と治療の考え方(沖田実)

制限因子と考えて、いまいちピンと来ない方は、まず調べる事が重要ですが、この本が1番詳細に書いてくれています。研究論文も合わせて載せてありますので、レポート作成時にも大いに助けられるものとなるずです。

ちなみに計測の仕方については、ほとんど触れていませんので、計測の仕方そのものを学びたい方は、こちらがオススメです。動画がついているので、写真だけではわからない実際の方法が学べます。

動画で学ぶ関節可動域測定法 ROMナビ 増補改訂第2版

少しだけ触れた、ムーブメントダイアグラムについては、理学療法士になってから学んでも遅くありませんが、興味のある方はメイトランドの四肢関節マニピュレーションが良いですね。
ムーブメントダイアグラムについて、詳細に解説しています。また、セラピストのハンドリング技術としての自動・他動運動検査についてのCD−ROMでの動画も付録としてついていますので、この書籍も技術向上に一役かうテキストと言えます。

メイトランド四肢関節マニピュレーション

関節可動域検査(ROM-T)のアセスメント、測定方法、制限因子のまとめ

  1. 関節可動域検査のアセスメントは、関節可動域検査でできる事だけを記載しましょう。
  2. 関節可動域検査は、日本整形外科学会が出している手法・方法だけではありません。
  3. 制限因子には、代表的なものがあります。難しく考えずに、本で読んで整理しておきましょう。

以上で、関節可動域検査に関するアドバイスでした。実習は大変だと思いますが頑張って下さい。健闘を祈ります。

関連記事


実習関連シリーズを読むにあたっての注意点

このシリーズに記載されている事は、極一般的で基本的な事のつもりで記載していますが、施設やバイザーによって考え方も指導方法も大きく異なります。また、地域や時代によっても違いますので、その点については十分に注意して下さい。

実習においては、すべては担当する指導者に従って下さい。また、こちらで書かれている事が確かな情報である保証は何もありませんので、担当指導者や幾つかの資料、学校の先生にも聞いたりしながら、たった一つの情報源を唯一の根拠としないように気をつけて下さい。

スポンサーリンク

更新日:

Copyright© 理学療法士ブログ , 2017 AllRights Reserved.