ネット版 勉強会(症例報告、ケーススタディー)

2-②.交通外傷後に頚部痛を訴える症例-仕事復帰に積極的な例-

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交通外傷後に頚部痛を訴える症例-仕事復帰に積極的な例-

第2回目の演者は、比嘉俊文さん(理学療法士)です。
沖縄県で様々な活動をしています。県士会に関する事や、沖縄県の療法士の臨床力向上をテーマに勉強会を主催(Updraft physio)したり、自身でも筋膜を主テーマにした臨床塾を開いたりして、県内の療法士にとって非常に有益となる情報を発信してくれています。
とても勉強家でありながら、自身の事だけでなく、沖縄県のセラピスト業界の事まで考えている人で、とても尊敬します。

また、比嘉俊文さんは、筋膜性疼痛症候群(MPS)研究会にも所属しており、筋膜性疼痛の原因、症状、治療方法の研究や、医療・学術情報発信にも携わっています。

今回は、その学術的な所と、自身の臨床を表現するような症例報告をやって頂けたらなという想いで声をかけさせて頂きました。
断られないか、ほんの少しだけ不安もありましたが、とても爽やかな返事で快諾して頂きました。

では、「交通外傷後に頚部痛を訴える症例-仕事復帰に積極的な例-」を報告して頂きます。比嘉俊文さん宜しくお願いします。

 

交通外傷後に頚部痛を訴える症例-仕事復帰に積極的な例-

沖縄こどもとおとなの整形外科
比嘉俊文

【基本情報】

20代前半 女性
153cm 43㎏

 

【主訴】

  • 事故に遭い首から肩にかけて痛い。重ダルい。
  • 頭痛がある。
  • 頚は寝てるだけでも痛む。
  • 子どもの保育園手続きの為、復職したい。

 

【受診までの流れ】

10日前、事故に遭い受傷(乗用車同士の後方からの追突事故)。頚が痛くて事故から2~3日後、近医へ受診して、湿布と痛み止めが出たが痛み緩和せず本日当院受診。

 

【Dr診察情報】

診断名:頚椎捻挫
X線所見:WNL
内服処方:セレコックス錠100mg ファチモジンD錠10mg

 

【PT初回評価・介入】

痛み:

頚部~左肩甲骨内側縁(rest+)NRS 8
どの運動方向でも痛むが、特に頚部伸展で増強あり
夜間寝るまでは痛む。
頭痛+(左側頭部)
※上位頚椎は触れるだけでも不快あり。精査はせず。
肩甲帯のmotionも不快あり。皮膚、浅層膜を軽い圧迫で覆うような刺激は少し楽。

 

その他スクリーニング:
  • 痺れ症状-
  • 表在感覚、深部感覚ともに左右差なし
  • 筋出力低下-
  • 脳神経異常-
  • 破局的思考-
⇒初回介入
  • 痛み増強のリスクあり、安静も1つの手段と思われたが、前院で内服治療に満足がいってない様子なので、まず患部の状態を把握する意味でも徒手介入を試みた。
  • 触刺激でも痛みを感じる要因の1つであろう過緊張状態のコントロール
  • 上位頚椎、肩甲骨(胸鎖関節)の関節受容器反射の抑制

介入後痛みの変化:NRS10 → 4

 

【2回目 解釈・評価・介入】(初回から5日後)

痛みは和らいできている NRS 4
頭痛なし
頚部痛は残存している(上位頚椎~肩甲骨内側)

考察:

初回の過緊張の解放が良い方向に向かっている。残っている頚部痛が器質的な病態だろう。
頚椎捻挫で痺れ症状なし、痛み症状は疼痛部位から椎間関節由来が予測される。

頚部伸展で疼痛誘発+(C2-3)
頚部全体的に分離性乏しい。

左僧帽筋hyper tone+
→僧帽筋を圧迫すると左上肢全体が重くなる。

*頚部伸展の痛み症状の増悪・緩和条件を評価
→・肩甲骨内転/胸椎伸展誘導では変化なし(下位脊柱の影響可能性低い)
・上肢腕組み、後方で組むでの同動作変化なし(上肢の影響可能性低い)
・立位/座位で変化なし(下肢の影響可能性低い)
・口を開けて同操作をすると重さなし。頚部伸展も痛みなし。

→左の咬筋群と僧帽筋との間の協調性の欠如で肩甲骨周囲の痛み・重ダルさに繋がっている可能性高い。

圧痛所見:左外側翼突筋++ 側頭筋+
開口評価:下顎が左側へ変位しながら開口する。

→顎関節調整後、咬筋群圧痛所見陰性化すると痛み・重ダルさ-

⇒2回目介入

・椎間関節症状疑われたが、咬筋群の関与の可能性のほうがより高く、症状に直結していた為、外側翼突筋・側頭筋の緊張コントロール、顎関節安定化を主目標に介入。

・歯ぎしりや噛みしめ症状は無かった為、事故後の緊張亢進が交感神経優位の状態を保持させていたことが伺える。精神的・身体的緊張緩和を図っていく。

 

【3~5回目】(週1回ペースで通院)

顎関節の調節・セルフケアアドバイス(咬筋マッサージ)にて痛みなく経過。

通院5回目で痛み増強なく、仕事復職可能となり、理学療法介入終了となる。

 

【まとめ】

交通事故での外傷性の頚部痛を訴える症例であった。社会的事情からも復職への意欲が高く、精神的な要因での症状緩和の変遷の影響は少なかったと思われる。

介入初期は10日間続いていた痛みやダルさの為、二次的な症状として、頭痛や頭頸部の過緊張を呈していた。過緊張状態が緩和すると、事故の衝撃が起因と思われる頚部から肩甲骨内側への痛み・ダルさ症状が顕在化された。

交通外傷によるむち打ち(WAD)の多くは椎間関節障害が多いと報告もあり、本症例もC5/6椎間関節症状の範囲と一致しており疑われたが、開口時に症状が消失することから、咬筋群(外側翼突筋・側頭筋)のFascia(線維性結合組織:髄膜・筋膜・靭帯・腱など)連鎖による症状であることが評価介入の中から推察された。

慢性痛のFascia由来の疼痛は、近年多くの治療報告があり、その重要性は周知されているが、より急性な外傷にも関与していることがわかり、貴重な経験を得た症例であった。

今後もより総合的で包括的な視点で理学療法を提供できるよう、研鑽をつんで参ります。管理人のたなはらさん、貴重な機会をありがとうございました。

 

比嘉俊文さん、貴重な報告ありがとうございました。

比嘉俊文さん、お忙しいなか、症例報告記事を執筆して頂きありがとうございました。

交通外傷後に頚部痛を訴える症例(WAD)について報告して頂きました。交通外傷後の頸部痛にFasciaが関与しているという、とても面白い報告でした。
私たちが、今後の臨床で頸部痛を評価していく上でも非常に参考になる報告だったと思います。

今回の「交通外傷後に頚部痛を訴える症例-仕事復帰に積極的な例-」を閲覧した方で、ご質問がある方は下のコメントフォームより受け付けています。

「発表後の質疑応答も楽しみにしているよ。」と言って頂いています。是非この機会を生かして、記事中の分からなかった事でも、Fasciaに関する質問でも、何でも聞いてみて下さい。

こちらは、比嘉俊文さんのTwitterです。


沖縄県ではtwitter利用者はあまり多くないように感じますが、twitterは結構有益な情報が流れてきます。比嘉俊文さんも、twitterをやっていて、私もそこから情報をもらったりしています。宜しければ覗いてみて下さい。

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