ネット版 勉強会(症例報告、ケーススタディー)

2-③.ライフスタイルと腰痛症-腰部椎間板ヘルニア-

更新日:

ライフスタイルと腰痛症-腰部椎間板ヘルニア-

今回の症例報告を担当して頂く方は、第1回目のネット勉強会でも報告をして頂いた平良雄司さんです。「日本臨床徒手医学協会」の認定セラピストで、講習会のアシスタントとして活躍されています。

(前回の報告時では、「特定の徒手療法学派で学ばれて、現在は、その徒手療法学派の認定セラピストとなっている理学療法士」として紹介させて頂き、徒手療法の学派については具体的には触れませんでした。)

今回のネット勉強会では、痛み治療の中でも特に徒手療法に精通している方々にお願いしたいなと考えていて、日頃からお付き合いのある平良雄司さんに私の考えを話した際に、すぐに記事制作の話しを受けてくれました。お忙しいなか本当に有難うございます。

私自身は、認定セラピストでも何でもないので「日本臨床徒手医学協会」の治療コンセプトなどの詳細については、平良雄司さんへ聞くのが良いと思いますが、私の方から簡単にですが説明させて頂きます。

徒手療法を使用する際には機能的な評価を重視するのはもちろんですが、「日本臨床徒手医学協会」では、機能的な評価の中でも骨盤帯や胸郭への徒手的な介入を試みながら理学所見の変化を確認し、そこから痛みの原因や治療方法を限定していくのが特徴的で、その考え方は「日本臨床徒手医学協会」に所属していなくても治療の考え方としてかなり参考になる部分があると思っています。

今回の報告でも、①最初にとった身体所見(理学所見)と、②骨盤帯・胸郭への試験的な介入後の身体所見の変化、を考察しながら治療を展開していく流れを分かり易く報告して頂いています。

痛み治療に関わるセラピストの皆さんにも是非参考にして頂けたらと思っています。では、平良雄司さんに「ライフスタイルと腰痛症-腰部椎間板ヘルニア-」を発表して頂きます。

日本臨床徒手医学協会のホームページwww.immsj-seminar.info

 

ライフスタイルと腰痛症-腰部椎間板ヘルニア-

琉球リハビリテーション学院
理学療法士
平良 雄司

症例紹介

彼女は農業を営む50代の女性である。半年ほど前に腰の痛みが増強したため、病院を受診した。腰部椎間板ヘルニアと診断されたが手術は必要ないと言われていた。今回、左腰部の痛みとともに左下腿にも疼痛が出現したため再度受診し、理学療法開始となる。問診、画像所見、触診等によりレッドフラッグの可能性は否定した。

症状:①左腰部の鈍痛 ②左ふくらはぎの鈍痛 ③左下腿前外側痛 ④左第2,3趾あたりに痺れ
画像(MRI):L4‐5間、L5‐S1間に椎間板変性、髄核脱出
MMT:足関節底屈 L(Good)<R(Normal)
足趾伸展  L(Good)<R(Normal)
DTR:膝蓋腱(+)、アキレス腱(減弱)、

SLR:左30°右70°※神経モビライゼーションにて左50°程度に変化
身体的ストレス:生活スタイル→床上で新聞を読む
仕事スタイル→農業(花畑、前かがみ姿勢)

心的ストレス:仕事が忙しく休めない。

 

理学所見

●視診

立位:胸椎フラット、胸椎左側彎(Th7左凸)、左肩甲帯挙上
座位:胸椎左側彎(Th7左凸)、左肩甲帯挙上
臥位:右腸骨後方回旋、右股関節内旋制限、胸椎Th7左凸

 

●自動運動

立位
前屈:胸椎屈曲の動きが乏しく腰部に痛み出現(戻すときにも痛み)、
後屈:前屈時痛程ではないが左腰部に痛み出現
座位
回旋:自覚的な制限なし(セラピストの視診では左回旋制限?、、、)、側屈:特になし

 

●荷重伝達テスト

片脚立位:左荷重時にふらつき、体幹動揺著明
Active SLR:右下肢挙上時に陽性、多裂筋補助にて陰性

 

※骨盤帯正中化、胸椎正中化にて再評価

●視診

立位:胸椎フラット、
座位:なし
臥位:なし

 

●自動運動

立位
前屈:胸椎屈曲の動きが乏しく腰部に痛み出現(戻すときにも痛み)
後屈:前屈時痛程ではないが左腰部に痛み出現
座位
回旋:自覚的な制限なし(セラピストの視診では左回旋制限是正)、側屈:なし

 

●荷重伝達テスト

片脚立位:左荷重時にふらつき、体幹動揺あるが是正傾向
Active SLR:右下肢挙上時に陽性、多裂筋補助にて陰性

 

ここまでの考察

ここまでの評価をまとめると①典型的な椎間板ヘルニアの症状である、②骨盤帯・胸椎正中化により姿勢は変化したが、自動運動時の疼痛は変化しなかったこと、また、正中化後、立位と座位に大きな姿勢の変化が見られないことから、静的姿勢による下肢由来の非対称性ではなかった。そして、次の検査に移った。

 

●疼痛誘発テスト

骨盤帯:-、腰椎:L4-5間+、胸椎:-、左股関節:+

 

●他動運動テスト

骨盤帯:なし、腰椎:L4-5間:過剰運動性、胸椎:ほぼ全ての分節にて過小運動性、股関節:両股関節伸展制限、左屈曲制限

疼痛誘発テストにて腰椎、股関節の何らかの問題があるということが分かり、他動運動テストにて過小運動性、過剰運動性の関節に対して関節モビライゼーション、スタビライゼーションを選択した。

 

まとめ

問題点として、神経滑走の低下、胸椎過小運動、腰椎過剰運動、股関節可動域制限、前屈動作の多い生活(床上動作、仕事)を挙げた。アプローチは、神経モビライゼーションによりSLR角度が変化したこと、多裂筋補助にてActiveSLRの努力性が改善した事から自主トレーニングにて、神経モビライゼーション・多裂筋トレーニングを指導し、床上動作の多いライフスタイルを洋式生活(椅子座位)に変更することと仕事量の調整を行ってもらった。

その他、胸郭の非特異的モビライゼーション、股関節周囲筋リリースを行い、週一回の理学療法にてSLRの変化を症例と確認しながら、仕事量を増やしていき約2か月にて理学療法を終了した。

本症例の腰椎に対するメカニカルストレスに対して、二つの事を問題点としてた。まず一つ目は、股関節と胸椎の可動性の低下である。股関節と胸椎の可動性が乏しければその間にある腰椎の可動が大きくなければ日常生活に支障をきたしてしまうのではないか。

二つ目はその状態で床上動作や前屈動作を繰り返し行えば当然過剰運動分節の椎間板に圧が多くかかるのではないかということであった。本症例の場合は前屈要素の多いライフスタイルを行っていたが、後屈要素の多いライフスタイルを行うことが多い場合は、椎間関節性の疼痛、もしくは椎体分離・すべり症等をきたしていたかもしれない。

私が理学療法評価において心がけている事は、身体機能を評価するだけではなく、その身体機能がライフスタイルに適合しているか(生活におけるメカニカルストレス)、また痛みを助長するような心理的要素(心理的ストレス)があるかを評価し、3つの関連性を考えるように行なっています。すごい技術等の発表では無いですが、以上で発表を終わります。

 

平良雄司さん、貴重な報告ありがとうございました。

平良雄司さん有難うございました。本投稿記事「ライフスタイルと腰痛症-腰部椎間板ヘルニア-」をお読みになった方で、平良雄司さんに質問がある方は、下のコメント欄に書き込んで頂けると、返信があるかと思います。返信までに少々お時間を頂く可能性がありますがご了承下さい。

 

日本臨床徒手医学協会 荒木秀明著書「非特異的腰痛症の運動療法(医学書院)」

 

 

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