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2-①.精神プロセスで増悪する慢性腰痛の一例 |スパインダイナミクス療法

更新日:

スパインダイナミクス療法 精神プロセスで増悪する慢性腰痛の一例 症例報告(OT)

今回の投稿は、第2回ネット版勉強会の1番目を担当してもらう事になりました比嘉祐輔さん(作業療法士)による「精神プロセスで増悪する慢性腰痛の一例」となっています。

比嘉祐輔さんは、身体の不調を整えるコンディショニングを、一般の方や運動部に所属する学生さんらを対象に行う、「開業療法士」として頑張っています。

制度上では、「治療」という言葉が使えずに、他の表現に変えなければいけなかったり、使用する言葉・用語に制限があるそうです。でも私から言わせて頂くと、整形外科外来で痛みの治療をしているのと何ら変わりはないと感じています。

むしろ、体組成計を使用したり、治療前後の姿勢や動作を静止画や動画を用いながら検証している姿は、とても臨床に誠実であると感じています。

今回の発表では、比嘉祐輔さんが積極的に治療の枠組みに取り入れているテクニック・コンセプトである「スパインダイナミクス療法」の紹介を兼ねて、症例提示する事を依頼しました。

スパインダイナミクス療法を学ばれている方や、スパインダイナミクス療法に関心のある人にとって参考になる部分があると思います。では、比嘉祐輔さん、宜しくお願いします。


※ スパインダイナミクス療法を学んでいない方には理解が難しいと思います。
http://nojiri-ch.com/sdこちらのサイトに説明がありますので一読頂いて読み進めることをお勧めします。

精神プロセスで増悪する慢性腰痛の一例

ヒューマンコンディショニング研究所(沖縄県)
作業療法士
比嘉祐輔

基本情報
40代 男性
* 身長 170cm
* 体重  67kg
* %MV  76
* WBI   42

%MV (筋質量)in body430にて測定 数式に当てはめ算出
WBI (運動負荷指数)SAKAI モービィーにて測定 数式に当てはめ算出

主訴
骨盤付近の鈍痛
左臀部に痺れ
長時間の立ち仕事、同一姿勢をとっていることが辛い

診断名
腰椎椎間板ヘルニアによる座骨神経痛
椎間板症(本人より聴取、他院を受診多数)

現病歴

  • 20年以上前に2度ヘルニアの除去手術(以後、軽度~中等度の慢性的な腰痛が継続)
  • 2014年頃より整形外科にて3ヶ月リハビリ実施(症状著変なし)
  • 約2ヶ月 プールにてリハビリ
  • 2015年 約半年間 ブロック注射実施(実施時は効いているいる感じはするが大きな変化はなし)
  • カイロ、マッサージなどに通院
  • 現在は週一回トリガーポイント注射、高圧酸素療法を実施(症状はVAS1~2程度軽減?)

初期評価

問診
内科情報:異常なし
食生活 :脂っこい食事が多く食事時間にばらつきあり。飲酒あり(ビール2~3本/日)
睡眠  :夜勤あり、睡眠時間ばらつきあり3~5時間、寝具に大きな問題なし
ストレス:痛みに強いストレスを感じており(息苦しくなることもある)
生活を痛みに支配されている(本人談)趣味・活動に影響
仕事  :飲食店(マネージャー業)

これまでの経過並びに症状を本人持参の書面にて説明(自主的に書面持参)
やや興奮気味にこれまでの経過を説明される。表情は暗く術者へ視線が合うことはなかった。抑うつ傾向な印象あり

立位姿勢評価 (腰椎部のみ画像所見、他視診、触診にて推測)
頸部前方突出~上位下位胸椎FLAT BACK~腰椎L4・5前弯頂点~骨盤後傾

疼痛評価
安静時 VAS 1 ~4(常に鈍痛あり)
仕事時 VAS4~8(特異的な時間あり)
動作痛 VAS6  (腰椎伸展時に疼痛)

時系列疼痛評価(本人により痛みをグラフ化)
起床時    VAS 8
出勤時    VAS 8
食事時    VAS 3
忙しい時間  VAS 6
帰宅時    VAS 2

1日の痛みのピーク3回程度
痛みの強いときは座っても症状は軽減しない

脊柱弯曲運動不全評価(脊柱起立筋部を打診にて評価)
上部下部胸椎域両側打診痛+
胸椎域棘突起圧痛+

胸郭ユニット(胸椎、肋椎、胸肋)、腰椎柔軟性低下《坐位にて脊柱屈曲・伸展テスト柔軟性低下、胸郭左右差+、圧迫左右差+》

安静時筋緊張
左半身  > 右半身
やや左半身筋スパズム優位

筋出力(膝伸展筋力測定)
左25.7KGF
右28.6KGF

仙腸関節テスト
FADIRF(+) FABERE(+)

感覚 異常所見なし
MMT 異常所見なし
SLRテスト 異常所見なし
FFD -5横指程度

セラピー介入

目的
脊柱の柔軟性を高め、%MV(筋質量)に見合ったWBI(筋出力)を獲得する

・徒手療法
・自主トレーニングの指導
脊柱の屈伸、側屈回旋運動・坐位四股、捻転

介入後

・筋出力
左25・7KGF → 43・2KGF
右27・6KGF → 52・0KGF

・仙腸関節テスト
FADIRF(-) FABERE(-)
・疼痛評価 VAS 1 (ほとんど痛みなし)
・立位姿勢 頸部前方突出(-)
・FFD +2横指程度

2回目~4回(1週間間隔で来所)

動作時痛(+)VAS 3

胸郭ユニット柔軟性低下(+)初回時と著変なし

FADIRF(-) FABERE(-)

上記介入に+α
自主トレーニング
疼痛時系列グラフより痛みが強くなる時間帯、日常生活上での呼吸法、呼吸ユニットへの自主トレーニング指導

5回目

筋出力
左71・3KGF
右72・6KGF
%MV 76
WBI 109↑ (初回42)
VAS 1~3 疼痛は自制内

現在はメンテナンスで当研究所へ月1回程度来所

病態推論

本症例は20年代の腰痛の経過を経ている。発症より多岐にわたる為、どのような経過を経て現在の病態に至ったかは定かではない。推論でしかならないが、初回施術後に疼痛の軽減並びに筋出力の改善が得られ、施術日は快適に過ごせた。翌日の朝より疼痛が出現している。

VASスケールからもあるように起床後、出勤時、仕事のピーク時に痛みの増悪があり、痛みが軽減してくる時間帯においても時間帯がほぼ決まっていることからも精神的なプロセスの中で痛みが変化していることがわかる。

このプロセスの中で拘束性換気障害を起こし息苦しさが出現(上位胸椎側腹部圧痛+)上部胸椎域の筋緊張亢進。また下位胸椎側腹部の圧痛においては食生活の問診からも内臓ストレスによる影響として考えている。

この過程で胸椎脊柱起立筋の筋緊張亢進により胸椎域の柔性障害・FLAT BACK化が起こり上半身質量が後方へ移動する。重心位置の変化に伴い骨盤の後傾が起き、腰椎椎間板への非生理的なストレスが生じたことで疼痛が生じたと考えている。

推論の検証

胸郭ユニットを中心とした脊柱の柔性障害に対し、徒手療法・運動療法を実施し疼痛の改善並びにWBIの向上が得られた。

仕事前、仕事時に増悪する疼痛に対しては胸郭ユニットの柔性障害に対し自主トレ、呼吸法を重点的に行うように指導したことで疼痛の改善が得られている。

まとめ

今回の事例では慢性的な経過をされている症例で病院、治療院を多数受診されている方であった。ここまでの経過の中で症状が改善されたことがなかったとの発言からも、これまでに関わってきた整形外科並びにセラピストが患部ばかりにとらわれ治療を進めていたことが症状改善に繋がらなかったと考えている。

全体を診て患部を診ることの重要性を再認識することができた症例さんでした。

小学生のような文面で理解しづらい部分も多数あったかと思いますが最後まで読み進めていただきありがとうございます。またこのような機会を頂きました管理人のたなはら様に心より感謝申し上げます。

私の治療ベースのspine dynamics療法研修会(入門1・2)が9月17日~18日に沖縄県でも開催されました。今後も、研修会が行われるかもしれないので、興味のある方は「心と体のリハビリテーション研究会」HP:www.koko-kara.info/でチェックして下さい。
是非、研修会でお会いしましょう。


 

比嘉祐輔さん有難うございました。

体組成計を使用して実際に変化が確認しながら治療にあたっていて、以前から治療の取り組み方などについて色々な話を聞きたいと思っていました。しかし、お互いなかなか会う時間も作れずにいたので、今回は症例報告会という形で話を聞けると良いなと思い、記事の執筆を依頼しました。

治療による変化をしっかりと読み取りながら、特殊な治療手技を用いて日々の施術にあたっている実際を伝えるとなると、こういった文字だけでの説明は歯痒いものがあったと思いますが、治療経過が分かり易く読みやすく制作して頂き有難うございました。

ブログ閲覧者からの質問などがあれば、可能な範囲でコメント欄から返信して頂けたらと思います。日頃の診療と育児とで大変忙しくしており、すぐに返信できないかもしれませんが、その点はご容赦下さい。

比嘉祐輔さん、記事制作有難うございました。

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