理学療法実習シリーズ

理学療法実習生への「治療見学に入るタイミング」のアドバイス

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「実習関連シリーズ」の記事です。
このシリーズは、学生向け、もしくは実習指導経験の浅い理学療法士向けに、クリニカルリーズニングシリーズと並行して作成しています。
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実習関連シリーズ

理学療法実習生への「治療見学に入るタイミング」のアドバイス

現在、クリニカルクラークシップに準拠した実習形態を求める理学療法士養成校が増える中で、中には、バイザー会議の時にクリニカルクラークシップに関する基礎知識や方法論の案内(説明)を行う学校もあります。

私は実習を進めていく上で、クラークシップを行う・行わないかに関わらず重要な事で、クリニカルクラークシップで実習を進めようとした場合は、特に重要となる学生の1つの課題があると思っています。

それは、治療見学に入るタイミングです。ほんの些細な事と思われる方もいるかと思いますが、この治療見学に入るタイミングについての個人的な考えと、これから実習を迎える学生へのアドバイスを記事にさせて頂きます。

 


はじめに

冒頭でも、少し挙げていますが、クリニカルクラークシップを実習地に指導しようとする養成校があるにも関わらず、これから挙げる治療見学に入るタイミングの重要性を最初から把握している学生はまずいません。

個人的には、クリニカルクラークシップに関する指導を実習地にするよりも、こういった事を学生へ最初からアドバイスしていてくれたらなと思ったりするのですが、そう言っても何も進まないので、このブログの実習シリーズの一部として取り上げさせて頂きます。

 

治療途中から「見学させてもらっても良いですか?」

これは、最も多いパターンだと思います。すでに治療がスタートして、理学療法士が患者に何かしらのアプローチをしている最中に、申し訳なさそうに「見学させてもらっても良いですか?」と傍から声をかけてくる場合です。

私自身は、実習がスタートしたばかりの時に限って言えば、基本的にはこの流れは仕方のないものだと思っています。

しかし、学生に、患者に対する自己紹介の時間は設けることはできません。

何故なら、既に治療が始まっていて、そのような時間を治療を止めてまで、新たに作っている場合ではないからです(治療時間は限られたものというのを知ってほしい為です。詳細は後述します)。

「名前は何て言うの?」など、患者側からのそういった質問がなければ、そのような時間はとらず、私自身から、「理学療法士の養成校から勉強しにきている学生です。」というような簡単な紹介のみになる場合が多いです。

そして、実際に見学が始まると、傍で見てもらっています。(普通の治療見学です。)この時に、私の方から学生に対して治療についての事や、患者の状態の説明などは基本的にはしません。この理由は、先ほどの挙げた理由と同じです。

治療を終えると、だいたいの場合、学生側から「少し質問して良いですか?」と聞いてきます。もちろんこの依頼にも応えるのですが、ここでの私の最大の疑問は、

途中から見学して、何をどうしようとしているかの説明も受けない状態で、ただ傍から見ていただけなのに「何を聞くのだろう」です。

そして、思考過程を含まない質問、例えば、手の当て方や、関節の動かし方、手技に関する質問をしてきた場合は、「それを知ってどうするの?」と確認をとります。

もし、学生にとって知って得する事であれば惜しみなく伝えるつもりではいますが、治療や評価に関する経験を持っていない状態で、今目の前で行われた治療の事の説明を求められても、どこから話していいのかわからず、私の方も話しようが無いというのが正直なところです。

一方的にベラベラと話して良いなら、話せなくもないですが、正直そのような時間はありません。

仮に、説明したとしても「よく分からない」というのがオチだと思っていますので、学生ためにも理学療法士のためにもならない無駄な時間だと思っています。

どんなに噛み砕いて話そうと思っても、私の力では、治療開始時点を見学していない状態で、さらに何が何だか分からない相手に対して一から説明を行うのは難しいです。

(推論過程を含まない、表面的な「触り方」などについての説明の場合は、実際に治療にあたる課題がスタートしていない段階で、最初に取り組むべき課題ではないと思っています。)

ですので、私は答える事ができる範囲で、とても簡単な説明のみをして、学生に私から質問をします。

「最初から見ていない状況で、何をしているとかイメージつきましたか?」という趣旨の内容の質問です。

 

治療スタート時点から見学に入ってもらった時の私の対応ですが、

治療に入る前に、見学に入りたいとする学生に対しては、(説明できる範囲の事に限られますが)事前に説明を行います。

例えば

  • これから治療に入る患者は、中腰をとった時に出現する腰痛を改善する目的で治療にあたっている。
  • 以前は、中腰をとるとすぐに痛みが出たが、今は、リハビリ室でその腰痛を再現できない状態で、日常生活上で時々感じる痛みに変わってきている。
  • これは、改善してきているという解釈をしているので、今介入しているアプローチを大きく変更する事はない。
  • まずは、前回の治療後からの1週間がどうであったかを確認して、その状況から今日の治療を進めていく予定。

というような話しをした上で、

「●●さん、中腰をとった時の腰痛は、前回の治療から、どのような変化がありましたか?」

という質問からスタートするようにしています。そうすれば、これから展開される事が何を目的にしているかを理解しやすくなると思っています。

そして、治療終了後の学生のやり取りも、具体的な事を話しやすくなると思っています。

※毎回時間をとれるわけではないので、事前説明をできない場合も出てしまいますが、可能な範囲で治療見学をしやすいように考慮はするようにしています。

もちろん、治療見学に入るという事を予定に入れて治療に当たるので、学生が患者に対して自己紹介する時間も組み込んで、実際の治療見学を進めていきます。

 

途中からの見学を繰り返す学生への対応

ここまでのやり取りで、学生自身が治療見学に入るタイミングを掴む場合が多いのですが、中には、なかなかそれができない学生もいます。

その場合は、何故、患者に自己紹介をする時間を学生に与えないのか、治療中に患者の状況を説明してくれないのか、などを考えてもらいます。

私と違って、周りのセラピストはとても優しいので、途中からの見学の場合でも、丁寧な対応をしてくれる事が多いので、(他のセラピストに比べて)私の対応が少し冷たいと感じている段階だと思っています。

冷たいと感じられたまま終わってしまっては意味がないので、これについては、ちゃんと何処かで時間をとって説明をしています。

実際に行う学生への説明(後述と記載した部分の説明)

理由としては、治療時間は有限で、しかも本来は患者の時間です。特に外来で20分という時間しかない中で、パッと目に付いた所に暇つぶし感覚で治療見学に来た「患者とは無関係の人」に勝手に私の方から患者の時間を奪う行為はできないからです。

そして、治療に入る前に済ませておくべきちょっとした説明が、既に治療が始まっているのでとれない為です。

これをするには、治療時間を削るか、治療をしながら学生と話さないといけないからです。

この重要な時間を、行き当たりばったりな(個人的にそう感じる)治療見学で、割く価値はないと思っているので、

  • 基本的には、治療中の説明は行えない。
  • 学生の自己紹介の時間は設けられない。

そして、治療を終えた後の質問に関しては、それまでの説明を行っていないので、

  • 細かい事の説明は行えない。

と話します。そして、

ただ暇つぶし感覚で見学するのであれば、これからも、途中から声をかけてもらって構わないけど、もし、何かを学ぼうと思っているなら治療が始まるスタートから立ち会った方がいいですよ。

と伝えます。ここからの選択は、学生自身で行う事なので、途中からの見学を辞めない学生を怒る事はありません。

 

でもクリニカルクラークシップで実習を進めるなら

レポートでのやりとりよりも、見学と実践の重要性を挙げながら、その見学と実践に取り組む姿勢が、何とも中途半端な気がしてなりません。

重要視すべきと言いながら、既に始まった治療で何を目的に展開されているかわからない治療の真似事をする事に次なる発展はあるのでしょうか?

私は、この状況が当たり前になる事に何ら価値はないと思っていて、「見学に入るタイミング」については、とても大切にするべき思っています。

 

もし、治療見学に慣れてきたら、、、

(学生)自身で「何を勉強したいと思っているのか」を考えてみて、その事をバイザーや周りの理学療法士に聞いてみて、(知りたい・学びたいと思っている)その何かについて見学できる場面がないかを確認してみるのは、とても良い事だと思っています。

もし、腰痛症の患者を担当したり、一度他で見学していたなら、その事を話して、「他の患者の場合では、どのように治療が展開されるのかを見学したい」というような事を相談してみると良いと思います。

すると、バイザーや理学療法士の方から、「●時から予定している●●さんの見学に入ってみる?」というような事を言ってくれると思います。(ここに関しては単なる予測に過ぎませんが、、、)

単純に、関節可動域測定が苦手と思っているなら、「実際に、どのように可動域測定を行っているか見たい(可能であれば実施させてほしい)のですが、それは可能ですか?」というような事を事前に聞いておけば、まさに学びたい事についての治療見学ができるはずです。

もし、具体的な事がない場合でも、治療見学に入る前に患者の事についての話す時間を作る事ができれば、

  • 今の患者の状態・状況
  • これまでの治療経過
  • セラピストが考えている・行おうとしている事

などについて、話しを聞いておく事ができ、今から展開される治療が「何を目的に行われようとしているのか」がイメージしやすくなります。

すると、治療見学終了後の質問も本当に知りたい事になる場合が多いように感じます。

そして、ただ単発で見学に入るのではなく、経過を通して見学に当たるのも価値がある事だと思っています。

見学していて何かを感じる(面白いなどの感覚的なものでも)のであれば、「今後の治療に関しても見学させてほしい。」「経過を追って、患者の変化を見てみたい。」というような事を担当理学療法士に依頼できるようになると、より治療見学が面白くなると思います。

また、新規の患者の場合も、「最初だからダメかな?」など躊躇せずに、見学に入ると良いと思います。

もし、断られても、なぜ新規の患者の見学に入りたいかを説明すれば見学させてもらえるはずです。それでも断られたら気にせずに、それを見せてくれる理学療法士にお願いしましょう。

新規の患者を診るというのは、担当した理学療法も何も分からない状況からスタートしているので、学生が担当患者を持った時と状況は似ています。

そこから、どのように評価・治療が展開されていくのかを見学する事で、多くの事に気付かされるかもしれません。

長い実習期間の中では、暇つぶし的な感じで治療見学に入る事もあるかと思います。こればかりは仕方ない事だと思うのですが、これが当たり前になってしまうと大半の時間を暇つぶしに当てている事になります。

 

最後に(失礼ながら養成校の理学療法士の先生方へ)

これは、個人的な見解を多く含むので、全て正しい事を書いていると言い切るつもりは一切ありませんが、大切な事だと思っています。

既に始まっている治療の途中から、見学に入ったその時に行われていたROM-ex の真似ごとをするのに価値があるとは思えません。

バイザー会議の際に、クリニカルクラークシップの基礎知識や、「これまでの実習スタイルよりクリニカルクラークシップが優れている」という事を実習地の理学療法士に伝える事も良いですが、

実際に、上記で解説したような指摘をせずに、最初から治療見学に入るタイミングについて考えている学生に出会った事はないので、

実習が学生自身のためになるように、より実践的な事についてのアドバイスを、今から実習に行こうとしている学生に対して行ってあげた方が良いのではないかと思っています。

あくまでも、当ブログ内の実習シリーズとして、理学療法士学生へ向けた記事とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございます。

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