理学療法士になるためには避けては通れない道である長期実習。
養成校のカリキュラムによって微妙に異なりますが、だいたい2ヶ月間という長いようで短い、短いようで長い、
いや、ただ単に「長い」長期実習がありますね。
理学療法士になるための最後の長期実習
今までの検査・評価実習で学んできた「検査と評価」に加えて、実際に治療的行為を行う、最後の実習ですね。治療実習という言い方をする学校もあります。
2ヶ月の実習を2回実施して、この2つとも基本的には似たような実習形態になるのではないかと思いますが、これも実習する施設によって、実習の具体的な進め方は大きく異なります。
しかし、どこの施設でもほとんど変わらないのは、現場で働いている理学療法士の治療を見学するという行為は変わらないはずです。
この見学は、実習期間中の大部分を占める時間になるかと思うのですが、この見学についての勝手なアドバイスです。
いつも、何をメモってるの?
毎度の事ながら、私自身の実習体験回顧録です。
常に冷静に私に突っ込みを入れるバイザーとのやりとりになります。
実習序盤のとある日の事です。
私の実習中の流れは、担当患者の評価や治療に入らない時間は、バイザーの治療を見学する事が多く、その日も、いつもの流れで見学に入ろうと、患者を治療中のバイザーに近づいて声をかけました。
「先生、治療見学して宜しいですか?」
バイザーはこっちを不審者扱いするような目で見ながら、
「ダメ」
僕は、苦笑いしながら、
「お願いします。ダメですか?」
(いつもの流れなので簡単には怯まなくなっています。これも成長?)
バイザーは少し意地悪そうな笑顔に変わり、
「しょうがないなー」
と一言。
私は、「ありがとうございます。」
(ここまでは、いつもの流れで、いわゆるルーティンです。)
見学に入ると、私はメモとペンを手に持って、ひたすらバイザーが行っている治療の手順や、どこを触っているか、何を患者に聞いたか、などを漏らさないように記録をとっていました。
すると、治療しながら私の方を見てバイザーが言いました。
「いつもさー、何をそんなに書いているの?」
私は言葉では説明しにくかったので、
実際のメモをバイザーが見やすいように傾けながら、治療の様子を書いている事を伝えました。
すると、バイザーからの一言です。
「それって意味あるの?」
この質問をするときは、基本的に意味が無い時です。
ですので、正解は「はい、意味ありません。」
もっとも優秀な答えは、
「はい、まったく意味ありません。」
となるはずなのですが、
ただ、その記録をとっているのが、バイザーの治療の様子なので、
「意味ありません。」と返答はしにくく、非常にデリケートな質問でした。
まるで、私の口から、「バイザーの治療の手順をメモっても意味が無い」って言っているようで、そんな事は絶対に言えません。
なので、黙っているしかありませんでした。
すると、バイザーは続けてこう言いました。
「お前、そのメモ見返しているのか?」
「今まで書いたやつを、見返した事あるか?」
「どうせ、それ、実習終わったら、もうどこ行ったかわからなくなるんだろ?」
バイザーはいつものように、冷たい目だけど、なんとなく笑っているような、文字では表現しにくい表情をしています。
ただ、この質問には比較的答えやすかったので、
「はい、読み返していません。実習後に読み返しそうな気はしません。」
こう笑顔で元気に答えました。
バイザーは笑いながら、
「じゃあ、書かなければ?」
こう言いました。
私は、元気よく、
「はい、やめます。」
こう返しました。
それ以降、全くメモを取らない事は無いのですが、何かしら「自分にとって価値のありそうだな」と思えるもののみを書くように変わっていきました。
私のバイザーは、とても合理的な人で、
「メモをした事が、ただとっているだけならやるな。」
「本当に治療風景を収めたいなら、動画で撮影しればいいんじゃん?」
というような事を言う方でした。
分かっているつもりでも、かなり多くの事を「なんとなく」だとか「みんながやっているから」というのが理由になっていて、
「何が目的なのか」という事を大切にしようと思っていても、結構、それができていない事が多いかと思います。
このメモ帳に記載する事も、有意義に使えば、素晴らしいメモ帳ですが、しっかり目的を持って使用しなければ、ただの玩具です。
見学中に、バイザーと患者で何か重要なやりとりが行われていたとしても、メモをとる事に必死になって、見過ごす・聞き過ごしてしまっていては本末転倒です。
治療見学中にひたすらメモをとっているあなたへ
その記録された内容が、後々何かに使われていないのなら100%無駄な行為です。
それよりも、「今バイザーが見ている患者を、もし、この場で代打を任された時に、私はどういう行動がとれるだろか?」だとか、
今、担当している患者がいるのなら、
「この患者さんの症状や特徴に、自分が担当している患者さんとの類似点はないか?何か、ヒントにできるのはないか?」
そういった事を意識しながら、そこに引っかかったものがあれば記録しておくというようにしておいた方が、後々使えるはずです。
今、目の前で見ている事を完全にメモ帳に再現する事は到底不可能だし、再現できても多分読み返しません。
治療見学中のひたすらメモをとっている行為が、何かの役に立っているかを今一度考えてみる事オススメします。